久保谷 帰宅直前から5シーズンぶりV 腰痛に耐え「帰んなくて良かった」
「男子ゴルフ・パナソニックオープン・最終日」(23日、千葉県千葉CC梅郷=パー71)
首位と6打差の20位で出た久保谷健一(45)=フリー=が7バーディー、ボギーなしの64で回り、通算11アンダーで並んだ同じ1972年生まれの宮本勝昌(44)=ハートンホテル=とのプレーオフを制し、今季初優勝を飾った。2012年の日本オープン以来、5シーズンぶりとなるツアー通算7勝目。上位陣が伸び悩む中、腰痛に苦しんできた男が大逆転で復活を果たした。
優勝会見の席に座るなり、久保谷は「帰んなくて良かった」とおどけた。歓喜ではなく、自虐的な苦笑いがこぼれた。
ホールアウトした際、1打差で単独首位の宮本は15番をプレー中だったが、久保谷は更衣室へ直行。クラブハウスのフロントで精算を済ませ、帰宅しようとしたところをツアー関係者に待機するよう止められた。
「ショットがひどすぎて、プレーオフ(PO)もやりたくなかった。誰か代わりに出てくんないかな」
優勝は頭にもなかった。だけどパットだけは「人生で3本の指に入るくらい」絶好調だった。1番で4メートルを沈め、続く3バーディーはすべて6メートル以上をねじ込み、前半9ホールのパット数は自己最少タイの9。11番では15メートルを決め、18番では「入るラインではない」という難度の高い4メートルをバーディー締め。そして無欲のプレーでつかんだPO決戦は、プロテスト同期生の宮本が1打目にOBをたたいて、勝敗は決した。
12年の日本オープン優勝後、腰痛に苦しめられてきた。14年6月に手術したが「しゃがめない、ティーアップもできない状態」が続き、引退も考えた。それでも今季は5年シードの最終年とあって、「悔いのないように、心置きなくやろう」と腹をくくっていた。
「食っていくにはゴルフしかない。腰が痛くても、必死にやる。それは変わらないと思う」。激痛に耐え、報われた。幸運だけではない。勝利の女神を力ずくで振り向かせた、誇らしい優勝だった。