新幹線運転士がフィジーク世界王者に 伊吹主税が語る筋肉と仕事の“二刀流論”

 伊吹主税は己と向き合うようにじっと鏡を見つめていた。まるでメロンのように丸々とした肩が鍛え上げた肉体の“顔”。オールジャパンメンズフィジーク4連覇中で、グランドチャンピオンシップスメンズフィジークでも3連覇中。日本フィジーク界の頂点に君臨するまでの道のりに迫った。

 トレーニングを始めたのは1回100円程度の市営ジムから。元高校球児でスノーボードやサーフィンと体を動かすことが趣味。「趣味を全力で楽しみたいが故にトレーニングをやっていた」とダンベルを握り始めた動機はシンプルだった。設備は万全とはいえない環境だったが、ブラッドピットのような海外俳優の肉体に憧れてマッチョな体を目指してトレーニングに没頭。いつしかベンチプレスは120キロを挙げられるようになり、2年ほどで本格的なジムに通うようになった。ジムの先輩に後押しされてジム入会後8カ月で大会に出場。関西オープンでいきなり優勝を果たし、“デビュー戦”を華々しく飾った。

 ただ、決して順風満帆に競技人生を歩んできたわけではない。JR東海で約14年勤務し、新幹線の運転士としても活躍。不規則な生活リズムが“壁”として立ちはだかっていた。「4日間でトレーニングに2回いけるかどうか」と泊まり勤務で、約24時間の拘束が基本。トレーニングと仕事の両立を果たしながら、競技者として高みへと歩を進めた。

 ジムに行くのがおっくうになることも珍しくなかった。それでも「とりあえずジムに行っちゃう。やる気出ないなとか思いながら。行っちゃえば始めるしかない。始めてしまえば途中から燃えてくるので」。これも新幹線運転士と競技者の“二刀流”を極めたからこそ見つけたマインドコントロールのテクニック。仕事を最優先で生活を送りながらも、競技者としても結果を追い求めてきた道のりが伊吹主税の“原点”となっている。

 24時間ジムの普及などでトレーニングが浸透してきた現在、フィジークの競技人口も増加。決して平坦ではないトレーニング人生を送ってきたからこそ、フィジーク王者としての使命を背負う。

 「次の世代に伝えられることがあるんじゃないかなと。サラリーマンをしながらチャンピオンになれるってことも伝えたかったですし、時短でトレーニングをやるためのコツとかも。そういうことを少しでも多くの人に伝えられたらなと思います」

 今は全国各地のJBBF大会でゲストポーザーも務め、憧れられる存在としてステージに立つ立場に。またオンラインサロン「フィジークタウン」でトレーニングの方法を惜しみなく伝えている。フィジークを次なる世代へ-。大義を成すべく、競技者としてさらに高みへ羽ばたいていく。(デイリースポーツ・北村孝紀)

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