「大相撲春場所」（１４日初日、両国国技館）

　５場所ぶり幕内復帰の剣翔（２９）＝追手風＝が８日、埼玉県草加市の部屋で稽古後、電話取材に応じた。十両優勝した先場所から状態の良さをキープ。「順調に稽古もできてる。来場所も調子よくいけるかな。やっと戻ってきたぞっていう。また新入幕の気持ちで、暴れてやろうという気持ちがあります」と、力を込めた。

　２０１９年秋場所、新入幕で優勝争い。１０勝を挙げ、敢闘賞を獲得した。自らを「バイキンマン」と言い、相手の嫌がるくせ者の相撲で白星を重ねた。

　名前が剣翔「桃太郎」ながら、気持ちは悪役。１０種類はある立ち合いで相手を幻惑する。「バイキンマンは健在かもしれませんね。剣翔とやるの嫌だなと思ってほしい」と、不敵に今場所もヒール宣言をした。

　独特の考えがある。「相手の相撲を見て研究して、自分の得意な体勢よりも相手の不利な体勢でやりたいと思っている。相撲は自分の得意な体勢になるのが基本なんですけど、僕はそこはちょっと違う。僕は右四つなんですけど、相手の右肘が甘かったら左差しにいきますし、相手の嫌なことを研究して嫌なことをやりたい。自分の力が出る立ち合いというよりも相手の嫌な立ち合いをしたい。僕は昔からそういう考えでやってきたので」

　再入幕となった今場所も大いにヒールに徹する。「今日はどんな立ち合いがくるんだろうと相手に思わせるのが僕の狙い。基本的にみんな立ち合い一緒じゃないですか。右四つだったら右でくるんだな、左だったら左でくるんだなとか、押し相撲だったらかましてくるんだなって分かるじゃないですか。僕はどうやってくるのか分からないのを目指しているので、そうすると相手は思いきり当たってこられないですよね。というのを記事にしてほしいです。それを見た相手がまた混乱する」と、早や心理戦も仕掛けた。

　器用さには自信がある。「自分で裁縫もしますし、よく折り紙で鶴を折っていた。普通の折り紙で折れるようになったらその４分の１の大きさで鶴を折ってみようとか、高校、大学と学生時代の授業中、暇だったので勉強しないで鶴を折ってみたりしてました」と、大きな手ながら、繊細さを併せ持つ。

　幕内だった昨年春場所で左膝を負傷し途中休場。そこから回復は長引いたが、戻ってきた。「後ろに下がるのが怖くなった分、やっぱり前に前に出ようという気持ちが出てきたので。先場所も前に出る相撲が多かったですし。新入幕の時よりもさらに前に前に出る、早く勝負を付ける相撲を」とケガの功名。

　先場所、後輩の大栄翔が初優勝したのは大いに刺激。「自信を持っていく。まあ目標というか、夢は大きく優勝を目指して。やるからには全勝するつもりでと思っているので…。追手風部屋、幕内連続優勝したいっすね」と、ぶち上げた。