九重親方 移転した新部屋に先代の優勝額「千代魂ですよ」

 新型コロナウイルス集団感染が発生し、大相撲初場所を全休となった九重部屋が東京都墨田区から葛飾区に移転した。自身も感染し入院した師匠の九重親方(44)=元大関千代大海=が18日、電話取材に応じた。

 幕内千代翔馬、十両千代鳳ら計16人が感染し、激震に見舞われた部屋が心機一転、スタートとなる。先代師匠(元横綱千代の富士)から継承した部屋から15日に引っ越し。16日に土俵祭りを行い、17日に「新生九重」の初稽古を行った。

 「力士たちにも不自由ない設計で部屋の方も土俵環境もいろいろ試行錯誤して自分なりに精いっぱいものを建てたので、力士たちも『使いやすい』と言ってくれて」と親方は満足げに話した。

 3階建てで、1階が土俵、2階が若い衆の大部屋、事務所。3階が親方の住居となっている。関取衆の個室は3部屋用意した。現在、7人の関取衆は全員、部屋の外の自宅から通っているため今は空き部屋。「この環境を見たら力士たちもやる気になるだろう」と、新生九重で個室入居第1号を待望した。

 先代師匠の夫人からは「先代の優勝額を1枚」譲り受け、新たな部屋の正面玄関に飾っている。「千代魂というのが好きな言葉なんですけど、千代の山さんの優勝額、千代の富士さんの優勝額、そして私の千代大海の優勝額を3枚飾りたいということを言ったら、千代の富士さんのおかみさんが、先代のおかみさんが『好きなものを持って行きなさい』ということで、全勝優勝のやつをもらって」と、明かした。

 先代の教えはすべて自身の血肉として流れている。「物より大事なものを受け継いでいるんだから。九重部屋のカンバンを受け継いだんだから」。部屋の看板は先代九重の看板を書いた方のお弟子さんに手がけてもらった。「看板は新しくしました。中国でも個展をやっている方で。それで書いてもらって。横書きでね。すごい、かっこいい字を書いてもらった」と満足だ。

 場所が変わっても、先代の魂は変わらない。「僕なんかは直系の弟子だからね、九重部屋という看板を新しく上げさせてもらったけど千代の富士道場というような感じでやっていますから。力士たちにも脈々とその気持ちを受け継いでもらっているし、それはもうそうですね。そこがなかったら、もう何もないので。はい、千代魂ですよ」と力を込めた。

 コロナというまさかの危機だった。「初場所前だったから。本当に俺をはじめ非常にショックを受けた場所だったですね。先場所は。歯がゆい気持ちでしたよ。同じ釜の飯を食っている仲間だから、みんなのことを思いやって、そういう時は団結が早かった。早く治して頑張ろうなという声をみんなで掛け合ってくれていたから。そこらへんは力士に救われましたね」と、部屋一丸で乗り越えた。

 17日の土俵祭りでは親方から弟子にあいさつ。「これから新しい九重部屋の歴史が始まるけども、一生懸命番付を上げていって、胸を張ってこの地域に愛される相撲部屋を開いていきましょう」と、伝えた。

 春場所(3月14日初日、東京・両国国技館)では初場所全休の分まで奮闘を誓う。「もう先場所の分までしっかりけがなく暴れてもらって、やっぱり九重部屋がいなかったらさみしかったよという声をいっぱいいただいたのでね。関取衆だけじゃなく若い衆も『場所で相撲取りたくてうずうずしている』と言っていたから。他のライバルの活躍を見ていて、ちょっと置いていかれたという気持ちも強いんじゃないかな。大栄翔なんかも同期生がうちの部屋にもいるし、一緒に闘った仲間があんな初優勝の姿を見せつけられたら黙っていられないでしょう。うちの部屋も。いい刺激ですよ」と言う。

 逆境も今後の肥やしとなる。「全てがいい経験になってね、マイナスの部分が一つもない。それぐらいの精神力は持っているからね、うちの部屋は先代から受け継がれて。なにくそという気持ちでけがでも病気でも何でも克服して次のステージにいく。先代のおかげですよ。僕はもう何もすることもなくね」とコロナの不安はもうない。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

スポーツ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(スポーツ)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス