ワクチンは五輪開催への特効薬にはならない? WHOは選手の優先接種に否定的

 世界保健機関(WHO)は25日、五輪選手へのワクチン優先接種について否定的な見解を示した。緊急対応責任者のマイク・ライアン氏が「最も危険にさらされている人たちにすら十分に供給されていない」と指摘。国際オリンピック委員会(IOC)は、義務化こそしていないが東京五輪の安全な開催へ選手、関係者の接種を奨励している。フランス・オリンピック委員のドゥニ・マセリア会長はワクチンなしでは選手は極めて厳しい状況に直面すると訴えた。

 ワクチンは東京五輪開催への“切り札”にはならないかもしれない。WHOで緊急事態対応を統括するライアン氏は25日の会見で、五輪開催の是非や必要な対策はIOCや日本が決めると強調した上で「最も危険にさらされている人たちにすら、十分にワクチンが供給されていないという現実を直視しなければならない」と述べ、五輪選手のワクチン優先接種に否定的な見解を示した。

 IOCのバッハ会長は義務化こそ否定しているが、11月の来日時に選手、関係者への接種奨励を約束。今月に入り、英紙「テレグラフ」がIOCが全選手への接種を検討していると報じていた。

 ただ、主要国では接種の遅れ、発展途上国では十分なワクチン確保ができていないとされる中で、ライアン氏は「全ての国で医療従事者と、感染で死亡する危険性の高い人たちへの接種を進めるという最重要課題に目下全力を挙げている」と述べ、世界的な医療従事者と高齢者への接種優先を強調した。

 一方で仏メディアによると、同国オリンピック委員会のマセリア会長は同日の記者会見で、東京五輪に出場する選手らは新型コロナウイルス感染症のワクチン接種なしでは「極めて厳しい」状況に直面すると訴えた。ワクチン未接種の選手は入国後2週間の隔離の上、毎日、朝晩に検査を受ける必要が出てくると警告した。

 日本の政府や組織委員会は「開催に向け、ワクチン接種は前提としていない」としているものの、8割が今夏開催に否定的な世論を説得する上での“頼みの綱”は、特効薬にはならない可能性が高い。

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