【長谷川穂積氏×大野将平(2)】強さの答えが見つかって(王者のまま)引退を決めた

  共通点の多い長谷川氏との対談に大野の表情も明るい
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 デイリースポーツのボクシング評論「拳心論」で健筆を振るう元世界3階級制覇王者、長谷川穂積氏(39)が、東京五輪の柔道男子73キロ級代表で、五輪2連覇を狙う大野将平(28)=旭化成=を練習拠点の奈良・天理大に訪ねた。格闘家としての矜持(きょうじ)や、東京五輪が延期され、開催に不安がある現在の胸の内などを聞いた。格闘家として頂点を極めた2人だからこそわかり合える、濃密な「世界王者対談」をお届けする。

 ◇  ◇

 長谷川「一本へのこだわりは」

 大野「リオの前くらいから、一本勝ちのこだわりは捨てています。そういう欲とか色気、一本で勝ってやろうという気持ちは油断や隙につながる。反則でもポイントでも勝ってやろうという気持ちでいることで攻撃的な柔道ができていて、結果的に一本勝ちになっている。一本がとれなくても悪くはないというスタンスだからこそ、一本勝ちが多いのかな。自分に背負わせるものが少ないから、思い通りの柔道、やりたいような柔道がとれているんじゃないかと」

 長谷川「自分が負ける姿を想像することは」

 大野「毎日の稽古では、自分がどうやったら負けるか、嫌がるかしか考えないです。そういうことを(練習相手の)天理大の学生に当てはめて稽古していく。練習相手を選ぶ時にも、気持ちが折れないとか嫌なことをやってくる選手ばかりを選んで、我慢比べをすることが多い。嫌なことをするのが稽古なので。自分が気持ちいいように稽古してもそれは稽古じゃないので」

 長谷川「でも、稽古でバーンと一本を決めて調子がよかったら気分が乗ってこない?」

 大野「投げは大きな魅力ではあるけど、そこまでの一手間、崩し(相手の体勢を崩す)、つくり(技の体勢をつくる)、掛け(技をかける)、決め(投げた後の動き)というのが柔道にはあり、段階、段階で自分のよさを確認しています。投げてヨッシャということはあまりないですね」

 長谷川「強さとは何かという答えは見つかりつつありますか」

 大野「それは全然ないですね。来年の節目(五輪)で一つの正解は出てくるかなと。ただ、五輪が終わって柔道人生が終わるわけじゃないので、また一つずつ自分の柔道スタイルの強さを証明し続けていけたらいいと思っています」

 長谷川「(強さの)答えはバラバラですね、僕は最後の試合(16年9月に3階級制覇を達成したウーゴ・ルイス戦)で指が折れて(試合1カ月半前に利き手の左手親指を骨折、手術)も試合をした。一回も気持ちが折れることなく試合ができたことで、自分にとってはこれが強さの答えなんだなと思ったんです。勝敗に関係なく、自分に負けないというか。強さの答えが見つかって(王者のまま)引退することを決めた。でも、強さは人によって違う。誰かに勝つことが強いという人もいるし、強さは優しさだという人もいる。大野選手は今、それを見つけているところかもしれないですね」

 大野「強さの答えが出るように、今後も濃密な柔道人生を歩みたいなと、穂積さんの言葉で感じましたね」

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