羽生結弦がSP世界最高「これまでの『バラード第1番』で一番」 9日フリーで完勝へ

 「フィギュアスケート・四大陸選手権」(7日、ソウル)

 男子ショートプログラム(SP)が行われ、初優勝を目指す羽生結弦(25)=ANA=は自身の世界最高を塗り替える111・82点をマークし、首位発進した。平昌五輪で五輪連覇を成し遂げた伝説のプログラム「バラード第1番」を完璧に滑り切った。金博洋(中国)が95・83点で2位につけ、冬季ユース五輪王者の鍵山優真(16)=神奈川・星槎国際高横浜=は91・61点で5位、友野一希(21)=同大=は88・22点で7位だった。男子フリーは9日午前11時30分から行われる。

 優雅に、しかしはかなげに。力強く、それでいて繊細に。聞き慣れたピアノの旋律とともに、再び伝説が動き出した。冒頭の4回転サルコーをはじめ、羽生は全てのジャンプを流れるように着氷。平昌五輪時よりもわずかに緑に寄せた新たな衣装でたたき出したのは、自身の持つ世界最高得点を更新する111・82点だった。

 「これまでの『バラード第1番』の中で一番よかったんじゃないか。何より曲をすごく感じることをしながらも、クオリティーの高いジャンプを跳べたのはこのプログラムならでは」。苦手意識のあった4回転サルコーは4・43点もの加点を獲得。演目変更の理由の1つが、高難度のジャンプと音楽との融合の難しさだったが、銀盤の上でそれらは見事なまでに調和した。羽生結弦が羽生結弦であるために。自身の目指す「フィギュアスケート」を体現した。

 19年11月NHK杯の公式練習中、4回転サルコーの感覚が合わずに苦しんだ羽生は、突如冒頭のポーズから「バラード第1番」を通しジャンプを跳んだ。「いいイメージがある」と、これまでも練習中に時折、感覚を呼び起こすきっかけとして同曲をかけて練習することがあったという。

 同曲は平昌五輪の“金プログラム”であることはもちろん、世界最高得点を3度更新した至高の名曲。オーサーコーチは羽生を「指揮者のようだ」と評したこともあった。銀盤を支配し、自身を奮い立たせる“魔力”すら持ったナンバー。この日「何の雑音もなく滑り切れた」その快感を、羽生は自ら「ワインとかチーズみたいなもの」と表現した。

 「滑れば滑るほど、時間をかければかけるほど熟成されていって、いろんな深みが出るプログラムだと思う」。気付けば会場は、以前とはまたひと味違った“羽生色”に酔いしれていた。

 「フィギュアスケートって楽しいなって思いながら滑ることができた」。王者の笑顔に輝きが戻ってきた。再びチェン(米国)や宇野昌磨(トヨタ自動車)と対する3月の世界選手権(モントリオール)を前に、「自分のスケート」の心地よさを取り戻した羽生。フリーで舞う「SEIMEI」も、五輪とは「また違ったものにしたい」という。進化した羽生結弦として、そこに立つ。男子初の主要国際大会完全制覇“スーパースラム”はあくまで通過点。さらなる伝説へ向けた序章にすぎない。

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