徳勝龍 幕尻V!41人抜き史上最大の下克上 天国の恩師へ朗報届けた

 「大相撲初場所・千秋楽」(26日、両国国技館)

 番付最下位、西前頭17枚目の徳勝龍(33)=木瀬=が結びの一番で大関貴景勝(千賀ノ浦)を寄り切り、14勝1敗で初優勝を果たし男泣きした。幕尻Vは00年春場所の貴闘力以来20年ぶりで、幕内全員41人抜きとなる史上最大の下克上を達成。相撲発祥の地、奈良県出身力士として98年ぶりに優勝。33歳5カ月の初優勝は年6場所制となった1958年以降、日本出身力士では最年長だ。18日に急死した恩師、近大の伊東勝人監督とともに戦い抜き、天国へ弔いVをささげた。

 徳勝龍が土俵の上で号泣した。こん身の左四つ、貴景勝を体ごと寄り切ると、絶叫。そして堰(せき)を切ったように感情があふれた。万雷の拍手の中、むせび泣いた。

 通常、東正位の横綱が使う東の支度部屋最奥に千秋楽、優勝者だけは座るのが慣例。幕尻から最も遠い、その“玉座”に促されると「顔じゃないから」と2度拒否しながら、観念して腰を下ろした。

 髪を直しながら、また泣いた。「伊東監督が亡くなってビックリしたけど、監督が見てくれていた。土俵で一緒に戦ってくれた」と絞り出した。10日目から5日連続で神がかり的な逆転突き落とし。監督が力を貸してくれているとしか思えなかった。

 監督が近大に誘ってくれたから今の自分がある。「いろいろある。うれしいのも。15日間、苦しかった」。重圧も監督に朗報を届けるため乗り越えた。

 涙もあれば、笑いも忘れないのが人情の関西人。優勝インタビューでは「自分なんかが優勝していいんでしょうか」と自虐ボケ。

 優勝の意識には「意識することなく…、うそです。めっちゃ意識してました。ばりばり、インタビューの練習をしてました」と館内を爆笑させた。最後は急きょ駆け付けた母・えみ子さん(57)に「いつも照れくさくて言えないけど、お父さん、お母さん、生んで育ててくれてありがとう」と感動で締めた。

 七福神の布袋様のように大きく突き出た腹が福を呼ぶ。貴景勝は徳勝龍の腹は「距離感が狂う」と言う。相手と距離ができるため引き技が決まると指摘した。弟弟子の志摩ノ海は「腹が僕らの頭みたいなもの」と言う。腹越しに相手を見ながら相撲を取るため、土俵際でも余裕がある。

 33歳でも動ける188キロ巨漢は赤ちゃんからすごかった。誕生時の3860グラムから半年で10キロに成長。小学生時は柔道、野球、相撲を掛け持ち。野球は捕手で、三振か本塁打の4番だった。中学では相撲一本に絞り、道場に行く前のおやつがラーメンとチャーハンだった。

 「自分は周りに恵まれている。関わった人に感謝したい」とどこまでも誠実。相撲へのひたむきさが41人抜き下克上&古都・奈良県勢98年ぶりVの奇跡を呼んだ。

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