札幌案、日本は強化面で打撃も…金2つのドーハで成果の暑熱対策、優位性失う

 国際オリンピック委員会(IOC)は16日、猛暑が懸念される東京五輪陸上のマラソン、競歩について、札幌で開催することを検討すると発表した。IOCによると札幌は五輪期間中の気温が東京よりも5~6度低いという。本番まで残り300日を切る中で、唐突に示された衝撃のプランに組織委、日本陸連、東京都など関係者は困惑を隠せなかった。

 実現すれば、大きな懸念となっていた選手、観客、ボランティアに対しての暑熱におけるリスクを軽減できる一方で、自国開催でメダルが期待される日本の選手たちにとっては大きなアドバンテージを失う可能性が高い。

 IOCが今回の発表をするに至った決定打となった9、10月のドーハ世界選手権で、最も成果を出したのは日本だった。陸連の科学委員会と密接な連携を取り、個々のデータを蓄積し暑熱対策を行った競歩では、男子50キロで鈴木雄介(富士通)、同20キロで山西利和(愛知製鋼)が金メダルを獲得。女子20キロ競歩では岡田久美子(ビックカメラ)が6位、藤井菜々子(エディオン)が7位に入り、史上初のダブル入賞を果たした。

 直前に東京五輪代表選考会のMGCが行われたため、主力を派遣できなかったマラソンでも、谷本観月(天満屋)が女子2大会ぶりとなる7位入賞。競歩、マラソンの両強化担当者とも「やってきたことの成果が出た」と、手応えを感じ取っていた。

 札幌開催となれば夏マラソンとはいえ、ドーハよりも湿度も低く、レースそのものの質が変わってくる。消耗戦にならず、スピードに富む海外選手向きのレースになる可能性が高い。実際、ドーハ世界陸上でも、急転涼しくなった最終盤に行われた男子マラソンはペースが上がり、日本勢は惨敗した。

 また、ホスト国の選手にとって最大の利点となる“地の利”も薄れる。マラソンは9月に東京五輪代表選考会のMGCを行われたばかり。東京の暑さやコースを想定して企画され、男女各2人の代表が決定した選考会だったが、大前提が崩れることになる。決定を受けて、マラソン女子代表に内定している前田穂南を指導する武冨豊監督は「東京に向けて準備してきた。今更それはないんじゃないか」と複雑な心境を口にし、男子の中村匠吾が所属する富士通の福嶋正監督も「困惑している」と話した。

 IOCによる前代未聞のちゃぶ台返しで、長い時間を掛けて築きあげてきた“優位性”がふいになる危機にさらされた。

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