青学大・原晋監督 「1億3000万人すべてがリーダー」
東京五輪に向けた新企画「スポトピ2020」に、3日連続で登場する青学大陸上部長距離ブロックの原晋監督(52)の最終回。原監督は4月に青学大地球社会共生学部の教授に就任し、「リーダーシップ論演習」の講義を受け持っている。教授としての思い、そして自身の今後への考えなどを語った。
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-リーダーシップ論演習ではどのようなことを教えているのか。
「座学的なこととしてリーダーとしての基本的なメカニズムを教えています。箱根駅伝の必勝スタイルを教えたり、いろいろな人をフォーカスしたビデオを流して、グループでディスカッションをしたりしています」
-例えばどのようなことを教えるのか。
「『タイプ別リーダーの特徴』というような形で『君臨型』と『AG(=青山学院)型』をどう分けていくかとか。AG型というのは青山学院で私のスタイルなんですけど。『今まで君臨型はこういうイメージだったんだよ』『青山学院ではこういうやり方をしているんですよ』と。答えが『はい』『いいえ』で終わらない、話題が広がるような問いかけをやって、解説をします」
-質問の具体例は。
「やってはいけない質問だったら、『何が問題なんだ?』の言い換えは『うまくいっているのはどこで、問題点はどこで、どうなんだろう?』とか。『この問題はだれの責任なんだ?』は『どうすれば一緒に問題を改善できるんだろうなぁ?』というふうに問いかけたり」
-スポーツだけにとどまらない。
「何もスポーツの世界の監督、選手がリーダー、部下という話ではないんです。ビジネスの世界でもリーダー、部下の関係性がありますから」
-学生が感じ取っていることは。
「聞いたら『リーダーとは今までの発想だったらトップリーダー、いわゆる責任を持っている人だけがリーダーであって、あとはみんな部下。しかし、原先生の授業を受けて、みんながリーダーなんだと。一人一人が責任を持って行動していくことが大切なんだ。ということをあらためて発見した。感じた』という言葉が出てきました」
-自身の思いや考えなどを発信する一つとしてメディアの存在をどう捉えているか。
「さまざまな組織の成長というものはトリプルミッションの好循環と言われています。真ん中に『理念』、そして『勝利』『普及』『資金』の三要素なんです。いくら勝利しても、マスコミから取り上げられなかったら普及しません。勝利することで普及が進んで、お金が回ってくるんです。さらに、そのお金を施設の運営とかに使ったりして、いい練習環境等ができて、また勝つ。勝つことでマスコミで取り上げられて普及する。普及するごとにお金が回ってくる。この好循環なんです。ということはマスコミを上手に使っていかないとメジャー化にならないわけです」
-自身の将来的な目標は。いろいろなことにチャレンジしていく気持ちは。
「それがね、何をしようかなと。自分探しを今、頑張ってやっています。でもそこまでの欲があるようでないからなぁ、実は」
-授業が充実している印象も受ける。
「スポーツから編み出したものですけど、『リーダーシップ』という教育・学問は、社会において普遍的なものがあります。いろいろなやり方がありますが、私の定義は『みんながリーダー』。たまたまポストについたら責任を持ってリーダーシップを発揮しなくてはいけないけど、ポストについていない人はリーダーじゃないか、というとそうではないと。1億3000万人すべてがリーダー。そういうメカニズムを伝えていくことができればうれしい、と今は思っています」