寺尾「よく頑張った。褒めてあげたい」病室で井筒3兄弟そろい踏み…最愛の兄に別れ

 「大相撲秋場所・10日目」(17日、両国国技館)

 大相撲の元関脇逆鉾の井筒親方(本名・福薗好昭=ふくぞの・よしあき)が16日午後9時11分、東京都内の病院で58歳の若さで急逝した。膵臓(すいぞう)がんを患っていた。突然の訃報から一夜明けた17日、角界は衝撃と悲しみに包まれた。実弟の錣山親方(元関脇寺尾)は前夜は病室で井筒3兄弟がそろい、最後の別れをしたことを明かし、「頑張った。褒めてあげたい」と最愛の兄をしのんだ。

 錣山親方の兄弟愛があふれた。両国国技館から徒歩5分、実父の先代井筒親方(元関脇鶴ケ嶺)の下で3兄弟が汗を流した井筒部屋の前。詰めかけた報道陣30人を前に仁王立ちして声を張り上げた。

 「井筒(親方)はさんざん戦ってきた。最後は家族だけで見送りたい。撮影や取材はここで終わりにして下さい。私たちの気持ちをくんで下さい。お願いします」。棺(ひつぎ)で眠る兄が部屋に帰る前、そう言って何度も頭を下げた。

 おかみさんの福薗杏里夫人、一人娘の清香さんは慌ただしく部屋を出入りした。まな弟子の横綱鶴竜は午前10時、部屋に硬い表情で入った。休場中とあり、錣山親方が盾になった。

 長兄の元十両鶴嶺山と3人で角界入り。井筒3兄弟として話題性に富み、競い合った。3人の中でも逆鉾の父譲りのもろ差しは芸術品だった。体重120キロ超でも土俵で軽々とバック転を成功させた。屈指の技巧派で金星7個、三賞9回(殊勲賞5、技能賞4)。

 そんな兄を弟は「天才。尊敬していた」と言う。前夜は兄弟3人で病室にそろった。「よく頑張った。褒めてやりたい」と心の中で会話した。幼少期は1歳上の兄とケンカばかり。常に背中を追ってきた存在だった。

 「俺ら3人はおやじ、おふくろの子供に生まれたのが自慢。おやじ、おふくろのもとに戻った、そう思うと気持ちは楽になる」。3兄弟そろっては両親の死に目に立ち会えていない。「初めて3人で。最後まで顔を見られたのは幸せ」。最後の別れで3人そろったことをかみしめた。

 悲しみをこらえ、NHKの相撲中継の解説も気丈にやり切った。それが相撲一家で育った末弟の務め。「井筒はいい相撲人生が送れた」と感謝した。

 突然の訃報に親方衆も悲しみに暮れた。朝日山親方(元関脇琴錦)にとっては恩人。「あの方のおかげで強くなれた」と小兵力士の戦い方を教えてくれた。同じ時津風一門の追手風親方(元幕内大翔山)は「兄貴分。さみしい」とガックリ。2週間前まで普通に連絡を取っており、「そこから『大ちゃん』と呼ばれるような」とまだ信じられない様子だった。

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