【記者の目】“親方目線”で若い衆を指導する姿-稀勢の里はもう引退覚悟していた

 第72代横綱稀勢の里(32)=本名萩原寛、田子ノ浦部屋=が16日、現役引退を表明した。進退を懸けた初場所3日目、平幕栃煌山に力なく寄り切られ初日から3連敗。前夜、師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)と話し合い、決断した。この日、都内・両国国技館で引退と年寄「荒磯」襲名会見を行い号泣。故障に苦しみ再起はかなわなかったが「一片の悔いもない」とボロボロになり17年に及ぶ土俵人生に幕を下ろした。17年初場所で悲願の初優勝を果たし19年ぶり日本出身横綱の誕生。相撲人気復活の立役者は今後は親方として弟弟子の大関高安ら後進を指導する。

  ◇  ◇

 稀勢の里はもう引退を覚悟していたと思う。今場所前、稽古後は上がり座敷に座り、ボクシング、アメフットなど雑談にも冗舌だった。8場所連続休場から再起した昨年秋場所前、稽古後は極力、報道陣を遠ざけ、自身の世界に入り込んだ。今場所前は明らかに違っていた。すさまじい勝負師のオーラ、プライドは薄れていた。

 部屋の稽古中もこんなに笑顔を見せたかというほど。部屋の若い衆にさまざまなトレーニングを教えた。ロープを自ら張ってジャンプ、ロープまたぎなど基礎体力を鍛え上げた。

 「力を付けているよ。運動神経はみんなある。それを起こしてやらないと」と“親方目線”にも見えた。三段目の壁を破れない若手には「考えてやれ」と声を上げて叱せき。稽古中にあんなに若手を指導する稀勢の里の姿は初めてで、そのことを指摘すると「ダメっすか。集中してないかな」と言って笑った。

 部屋は大関高安の下は三段目に3人と“空洞化”。「昔の鳴戸部屋のように」と、自身が若手時代で鍛え上げられた頃の部屋は幕下、三段目が火花を散らし活気があふれていた。そんな部屋を少しでも取り戻したかったか。現役の間に培った“稀勢イズム”を必死に伝えようとしていた。(デイリースポーツ・大相撲担当・荒木 司)

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