稀勢の里引退、まだ見ぬ“先代師匠が見た横綱の景色”
大相撲の横綱稀勢の里(32)=田子ノ浦=が16日、都内で引退会見を開いた。自身が15歳で入門した際の師匠で、故人の鳴戸親方(元横綱隆の里)からは、“横綱は見える景色が違う”と教えられていたというが、「先代の見ていた景色はまだ見えていないです」と、思いを振り絞った。
大関と横綱は、1段階の番付の違いでは形容しきれない差がある。外見的なものだけでも綱を張る、番付降下がない、横綱として土俵入りを行うなどがあり、昇進時には力量が抜群であることに加え“品格”が問われる。横綱が携わる催事は神事としての色も濃い。また、出処進退も自ら決めなければならないという責任も重い。
先代に説かれた“景色”について、「大関と横綱というのは、本当にまったく違うものでした」と、答えた後でこう続けた。
「ですが、まだまだ、先代の見ていた景色は、まだ見えていないです」
在位は12場所だった。ただ、そうした時間や期間的なもの以上に部屋の人々、支援者、ファンからの期待に応えられなかったことに「皆様の期待に沿えられないというのは、非常に悔いが残りますが」と申し訳なさをにじませていた。
それでも、「自分自身を変えてくれました」と横綱という地位を表現した。「まったく環境も変わりましたし、そして自分の意識も変わりましたし。そういう部分で、本当に自分自身、変わったなと思います。もちろん意識の部分もそうですし、環境の部分もそうです。本当に説明はしにくいですけども、自分の中で、本当に変えてくれたと思っています」と、思いを語った。