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柔道新ルールで一本勝ち急増 指導差決着廃止で積極性促進 一方で反則負けリスクも

 世界選手権男子66キロ級決勝で、ミハイル・プリャエフ(奥)を袖釣込腰で破り初優勝した阿部一二三=17年8月29日(共同)
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 高校野球の今春センバツ大会から延長タイブレークが導入されるなど、スポーツとルール変更は切っても切れない関係にある。日本のお家芸である柔道でも、2020年東京五輪に向けて、国際柔道連盟(IJF)がルールの改正を行った。16年リオデジャネイロ五輪以降の大きな変更点としては、「有効」の廃止、指導差だけでは試合の決着をつけないなど、より攻撃的でわかりやすい柔道を志向するものだ。17年1月、今年1月と2度の改正を経て「一本」による決着が増加する傾向にある一方、指導3つの「反則負け」のリスクも高まっている。今一度このルールの特徴を検証してみたい。

 誰が見ても分かりやすく攻撃的な柔道を-。今回のルール改正の背景には、柔道が持つダイナミックな魅力をより高めようとするIJFの意図がある。

 最も大きな特徴は、「指導差」で決着をつけない点にある。契機になったのがリオ五輪男子100キロ超級決勝だ。手堅い闘いに徹した王者リネール(フランス)は、投げる意思を見せないまま指導1-2で原沢久喜(日本中央競馬会)に辛勝。世界が注目した中で凡戦を演じ、IJF理事の山下泰裕氏は「がっかりした。王者を決めるのに指導差1つでいいのかという話になった」と内幕を明かしている。

 こうした“逃げるは恥だが役に立つ”ともいえる悪例を排除しようとしたのが新ルールだ。指導差がついて試合時間が終わっても延長戦に突入し、技のポイントが入るまで決着がつかない。「反則負け」(一本扱い)という例外はあるが、徹頭徹尾、技を狙わないと勝てないゲーム設計となった。実際に序盤からスピーディーな展開が増え、積極的に技をかけようとするようになった印象が強い。

 例年2月に行われているグランドスラム(GS)パリ大会の成績で比較したい。全試合における「一本」による決着の割合は、リオ五輪と同ルールの16年は男子53%、女子48%。1度目の改正があった17年は男子60%、女子54%。2度目の改正後に行われた18年は男子77%、女子74%と、ルール改正のたびに着実に増加傾向にあることがわかる。

 投げる技術の高い日本にとって有利なルールであることは間違いない。特に男子66キロ級世界王者の阿部一二三(日体大)はキレ味鋭い担ぎ技を武器に、昨夏の世界選手権は6試合中5試合で一本勝ち。昨年は国内外で1年間負けなしで、「僕にとっては有利なルール。指導を気にせずにしっかりと投げ切ればいい」と話している。

 名目上「一本」決着が増えた一方で、消極的な柔道に対する指導のペースが速まり、「反則負け」が増えている負の側面も無視できない。2月のGSデュッセルドルフ大会100キロ超級決勝では、原沢と王子谷剛志(旭化成)が両者反則負けで優勝者なしという前代未聞の決着となった。裁定に疑問の余地はあるものの、退屈な攻防は許さないというIJFの徹底した考え方が如実に表れた。日本男子の井上康生監督は首をひねりつつ「ルールに対応できない者は生き残れない」と適応力をテーマにしている。

 微調整の可能性はあるが、東京五輪はこのルールがベースになる。投げ切る力、寝技で決め切る力、延長戦に入っても攻め続けられる(=指導を取られない)スタミナが、金メダルへの重要なファクターになる。

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