稀勢の里124日ぶりに勝った 阿武咲瞬殺で幕内通算700勝
「大相撲九州場所・2日目」(13日、福岡国際センター)
左上腕部などの負傷で先場所を全休した横綱稀勢の里(31)=田子ノ浦=が、初顔合わせの新小結阿武咲(21)=阿武松=を突き落として初白星を挙げた。7月の名古屋場所4日目以来124日ぶりの勝利で、幕内700勝を挙げ、歴代8位の貴乃花の701勝に王手をかけた。優勝制度が制定された1909年夏場所以降、初日から連敗した力士が優勝した例はなく、復活Vロードへ踏みとどまった。
出直して来い!!と言わんばかりの瞬殺だった。稀勢の里は阿武咲の弾丸のような当たりにもびくともしない。圧力で跳ね返すと、相手の体勢はグラリ。最後は得意の左で土俵に突き落とした。
支度部屋では質問に「うん、うん」「うん、まあ良かった」「いいと思う」と何度もうなずいた。左上腕部を故障以降、使えていなかった左のおっつけも本場所の土俵で久々に解禁。「良かったと思います」と、完全に不安を払しょくした。
自身を慕い、小結まで駆け上がってきた21歳と初顔合わせ。阿武咲が十両から幕下に落ちた際も胸を出し、稽古をつけた。四股の踏み方から教え、惜しまず自身の経験を授けた。
無我夢中の相撲小僧の姿は自身の10年前とだぶる。「気持ち?違いはある。稽古場ではいい相撲を取る。力のある、いい力士と思うから。楽しみとは違うけど非常にいい相手」。実現した本場所での対戦が心地よかった。
秋巡業中、平幕朝乃山(高砂)らを積極的に稽古相手に指名した。「若手を育てていく。それが相撲界全体の発展につながる」。角界の頂点に立つ者として使命を自覚。そして壁になる責任も果たした。
八角理事長(元横綱北勝海)は「これで落ち着ける。左からおっつけていた。それが出れば腰も落ちて安定してくる」と、精神面で大きな1勝を強調した。
黒星発進も、一夜明けた朝稽古では引きずってはいなかった。「相撲勘?そういうのが回復していかないと」と冷静。124日ぶり白星で勝負勘が戻ってくるのは間違いない。
「きょうはきょう。また明日しっかりやる」と安どする暇はなく、前だけを見る。節目の幕内700勝で貴乃花に王手をかけたが、「まだまだ伸ばせるように」と通過点に過ぎない。3場所連続休場から4場所ぶり復活優勝へ、逆襲へののろしを上げた。