稀勢の里、貴になれ!死力の決意 千秋楽も強行出場

 「大相撲春場所・14日目」(25日、エディオンアリーナ大阪)

 13日目に左肩周辺を負傷し、休場濃厚と思われた新横綱の稀勢の里(30)=田子ノ浦=が、横綱鶴竜(31)=井筒=戦に強行出場。痛みに顔をしかめ、力なく寄り切られ、2敗目を喫した。2場所連続2度目の優勝へ、1敗を守った大関照ノ富士(25)=伊勢ケ浜=を1差で追う展開になり、直接対決となる千秋楽への出場も明言した。勝てば優勝決定戦へ、負ければ照ノ富士の11場所ぶり2度目の優勝が決まる。

 館内に悲鳴がこだました。稀勢の里は、右から張って左差し狙いも鶴竜の頭を左肩に食らった。もろ差しを許し、力なく土俵を割った。肩をテーピングで固めた左手をダラリと下げ、右手を腰に置き、激痛に顔がゆがめた。

 土俵に立つことが信じられない。誰もが休場は避けられないと思った重症だった。前日、横綱日馬富士に吹っ飛ばされ土俵下に転落。左肩を押さえ、立ち上がれなかった。「怖くて動かせない」と患部をつって、病院に直行。連勝が12で止まる横綱初黒星だった。

 一夜明け、結論は強行出場だった。朝稽古は休養したが、師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)は「出ます。本人の強い意志がある。横綱と話して、本人は出ると言っている。『大丈夫』と言う。体が動く。少しましにはなっていた。問題ない」と報道陣の度肝を抜く決断を明言した。

 会場入りの際は左腕をつらず、詰めかけたファンから「頑張れー!!」と悲鳴にも近い声援を受けた。支度部屋では立ち合いの確認の際「がーっ」と痛みのあまり絶叫。回復していないのは明らか。それでも横綱の誇りと責任で

 「まあ、何とかね。集中してやるだけと思った」。支度部屋ではいつも通りの淡々とした“稀勢の里節”。千秋楽への思いを問われると「やるからには最後までやりたい。まあ大丈夫。あしたまたしっかりやる」と出場を宣言した。

 千秋楽は照ノ富士との直接対決。本割で勝てば優勝決定戦になり、1949年以降4人目、先代師匠の故鳴戸親方(元横綱隆の里)も果たした新横綱優勝の可能性を残す。

 01年夏場所の横綱貴乃花の姿がよみがえるのか。右膝半月板を損傷する重傷を負い、千秋楽は横綱武蔵丸と相星になった。優勝決定戦では上手投げで勝ち、22度目の優勝。奇跡のVに、当時の小泉純一郎首相は表彰式で「痛みに耐えてよく頑張った!!感動した!!」と称賛した。

 初代若乃花の化粧まわしを借り受けるなど、稀勢の里にも流れる「土俵の鬼」の系譜。勝っても負けても、鉄人横綱伝説として相撲史に刻まれる。

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