川内 最後の挑戦で執念の3位 満身創痍も日本人トップ 代表入り前進

 「福岡国際マラソン」(4日、平和台陸上競技場発着)

 17年ロンドン世界選手権の代表選考会を兼ねて行われ、同世界選手権の日本代表入りを狙う最後の舞台と位置づけている“最強市民ランナー”川内優輝(29)=埼玉県庁=は、満身創痍(そうい)の状況の中、驚異的な粘りの走りを見せ2時間9分11秒で日本人トップの3位に入り、代表入りへ大きく前進した。昨年の世界選手権銀メダリストのイエマネ・ツェガエ(エチオピア)が2時間8分48秒で初優勝を果たした。

 42・195キロに、川内優輝という男の生きざまが凝縮されていた。ペースメーカーがいなくなった23キロ過ぎ。歯を食いしばって前に出た。日本勢をふるい落とし、ケニア、エチオピア勢とのデッドヒート。何度も突き放されながら、その度に必死の形相で食らいついた。日本人トップの3位のゴールテープの先に見えたのは、これが最後の挑戦と決めた世界選手権の舞台だった。

 レース後は感情を抑えきれなかった。汗とともに頬を伝ったのは、涙。「本当にもう今回は最悪の状況だったので…。うれしくって涙が出た」。これが64回目のマラソン。うれしくて泣いたのは初めてだった。

 11月に痛めた右足ふくらはぎに加え、2日前には左足首を捻挫。家族からは欠場を勧められた。それでも川内をスタートラインに立たせたのは、何よりも大切にしてきた信念だった。

 「招待を受けて走れる状態である以上、走らないわけにいかない。失神したことはあるけど、今まで自分の意思で走るのをやめたことはないので」。市民ランナーの代表として、世界を目指してきた。笑われた。馬鹿にされた。結果が出なければ、勤務先に『アホ公務員、2度と出るな』と手紙が届いた。それでも走り続けてきた。走ることへの覚悟は、どんなことがあっても揺らぎはしない。

 今後は代表入りを決定的にするため、海外レースでタイムを狙っていく。ただの市民ランナーに戻るのは、もう少し先延ばしになった。「もうしばらくお付き合いください」。見る者の心を打つ“最強市民ランナー”の挑戦が、いよいよクライマックスに突入する。

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