「育成」しながら「勝つ」緒方カープ

 8月戦線の一つの“試練”と考えていた2位・阪神、3位・DeNAとの6連戦を3勝2敗1分で乗り切った。優勝へのマジック点灯こそお預けになったが、緒方カープにとっては上出来の1週間だったのではないか。

 首位を独走するカープの強さを再確認できたのが、3日の阪神17回戦(マツダ)。離脱中のジョンソンに代わって先発に回っている九里が初回いきなり4点を奪われ、完全に負けパターンにはまっていたが、最終回に相手の守護神・ドリスを捉まえて同点に追いついた。サヨナラこそ逃したものの、中継ぎ陣が踏ん張って勝ちに等しいドロー。この試合の殊勲者は九回に代打で2点適時打を放った西川と、同点の本塁を踏んだ代走・野間だった。

 3点差を追う九回、1死一、二塁からまず代打・松山の右前適時打で1点を返し、なおも一、三塁とした。その松山の代走が野間で、続く西川が放った右中間を破る打球で一挙に一塁から本塁を陥れた。普通の走者なら三塁止まりだが、抜群のスタートを切った野間は二塁を回ったところからトップスピードに乗り、悠々本塁まで帰ってきた。別段阪神の中継プレーが乱れたわけでもない。野間の『打球判断の良さ』と『ベースランニングの巧さ』がきわ際立った同点劇だった。

 “代走の切り札”赤松を欠く中において、野間の存在はチームにとっては大きなものになっている。僅差の終盤ではこの野間の『走力』が確実にモノをいう。足のスペシャリストと言えば、引退した巨人・鈴木尚広が有名だが、盗塁の技術をさらに磨けば彼に匹敵する存在になるに違いない。他球団を見回しても、彼を上回る走力の持ち主は今のことろ見当たらない。

 155キロ超の剛速球に負けず、粘った末に同点打を放った西川の「勝負強さ」も野間の「走力」に勝るとも劣らない。こうした“控え組”が起用された場面できっちり仕事をするのが今年のカープ。野間は打撃、西川は守備と明確な課題があり、定位置確保にはさならる努力が求められている。特に、西川は安部とキャラがかぶる三塁より、二塁、遊撃のレギュラー奪取に努力を重ねるべき。二塁は菊池、遊撃は田中と球界でもトップクラスの2人がいるが、彼らが健在なうちに少しでも差を縮めてもらいたい。それが“常勝カープ”を築く前提になると思っている。

 勝ちながら育て、育てながら勝つ-。これができるチームは本当に強い。4日のDeNA15回戦(横浜)ではプロ2年目の左腕・高橋樹がプロ入り初先発を果たした。結果は4回8失点で翌日2軍調整を命じられたが、いい経験をしたと思う。彼の持ち味は「制球力の良さ」と「緩急をつけた投球」だが、これをさらに磨いていけばまたチャンスは巡ってくるだろう。2軍には新人の高橋昂という左腕もいる。独走しているからこそ、若い彼らに1軍の経験を積ますことができる。次の世代に羽ばたく彼らの成長も、連覇への課程でよく見ておいてほしい。

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