【36】尊敬できる存在に 「恩師」にスカウトの名を挙げる選手も

 「日本高野連理事・田名部和裕 僕と高校野球の50年」

 高知の春野球場で四国大会が開かれているときだった。地元のM監督から電話があった。球場隣接の食堂で昼食中、たまたま満員でスカウトと相席になったという。

 春野は周辺に他の施設はないところだ。そこで「高校野球の監督がプロ野球のスカウトとメシを食ってもいいのか」と言われたという。

 学生野球はプロ野球との不幸な関係が長く続いた。特にスカウトとの関係は厳格に一線を画してきた。

 将来プロ野球で活躍できる逸材かどうかの見極めは、スカウトの眼力にかかっている。そのためには正々堂々とスカウティング活動が行われることが大事。前段の昼食時にスカウトと同席したことが、問題視されるのは大変残念なことだ。

 ところで選手生活を終えたとき、「あなたの恩師は」と問うと、ほとんどの選手が学生時代の監督の名前を挙げる。技術面だけでなく、人間的な面での指導を受けたことが去来してのことと思う。

 一方、プロ野球に進んだ選手は担当のスカウトの名を挙げる選手もいるという。ドラフトを経て熱心に誘ってもらった経緯もあっただろう。さらに、入団後は私生活の面まで注意を受け、奮起した事例もあると聞く。

 こうした選手は尊敬する存在としてスカウトの名を挙げる。スカウト諸氏が決められたルールを守った上で将来の逸材をしっかり見極めてくれることが、プロ野球と学生野球との健全化にはもっとも必要な環境だ。

 実は06年からは、プロ野球各球団が全国の加盟校に古ボールを贈ってくれることになった。

 僕の事務局長時代の全国大会中、セパ両リーグのスカウトの代表数名と懇談会をもっていた。その時々の問題となる事例の確認や規定の解釈などの意見交換をしていた。

 あるとき某球団スカウトから古ボール提供の話があった。プロ野球全体では年間に相当数のボールが消費される。聞けばどうも特定のルートで学生側に渡されているケースもあったようだ。

 提案は古ボールをすべて高野連に託して、全国の加盟校に公平に配ってもらえないかということだった。その後の球団代表間の協議では「フランチャイズ以外に送ってもなぁ」と消極的な声もあったとか。

 結局、全球団の賛同を得て春のキャンプ地から順次排出される古ボールを現地の都道府県連盟が受け取り、加盟校に5打(ダース)ずつ配ることとなった。現在は、3巡目に入っている。

 ボールを手にした高校の主将には、球団代表宛にチームの抱負を書き添えた礼状を出してもらっている。フランチャイズ以外からの感謝の手紙が圧倒的に多いそうだ。

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