【28】甲子園歴史館誕生秘話 野球ファンが支えた球史の宝庫

 「日本高野連理事・田名部和裕 僕と高校野球の50年」

 阪神甲子園球場の外野スタンド下に甲子園歴史館がある。高校野球(900点)と阪神タイガース(1900点)の歴史的資料が展示されている。

 甲子園歴史館は、甲子園球場の改修工事が完成した2010年に開設されたが、実はその30年も前から歴史館の設置を強く望んでいた人がいた。

 元西宮市長の奥五一さんだ。奥さんは「西宮市の世界に誇るスポーツと文化施設として甲子園に野球資料館をつくりたい」と自ら東京の野球体育博物館(当時)を視察に行かれ、なんとその先で客死された。1984年10月のことだ。

 その後阪神甲子園球場では、順次改装工事を行いながら外野売店内に阪神タイガースを中心とした資料展示スペースを設け、ファンに往時をしのんでもらっていたが、何しろ十分ではない。球場の改修計画で歴史館設置が浮上した。

 歴史館は、レフトからライトまでのスタント下ほぼ全域に展開され、東京ドームの野球殿堂博物館とほぼ同等の面積が確保されたが、その経費も捻出しなければならない。

 そこで僕は当時の揚塩健治球場長(現阪神不動産(株)代表取締役社長)に助言した。

 以前、近畿高校野球連盟の研修で奈良・東大寺の上野道善別当の法話を伺ったことがあった。東大寺では明治の大修理以来の昭和の大修理を完工、一般から広く「寄進瓦」を募集して大屋根の葺(ふ)き替えをしたという。

 その際、明治時代の瓦を丁寧に降し、裏に記載された寄進者の所在に送り返したという。寄進者の末裔(まつえい)はご先祖の寄進に驚くとともに昭和の寄進も進んで応じてくれた方が多かったそうだ。

 一方、米国ニューヨーク州の野球殿堂があるクーパースタウンのダブルディ球場の正面入り口には寄付者がサインしたブロックが敷き詰められている。揚塩さんは、クーパースタウンの野球殿堂とダブルデイ球場のブロックを実際に視察、社内に「寄進レンガプロジェクト」を立ち上げ、歴史館開設費用の募金を実現させた。

 オランダから取り寄せた特殊なレンガにアルファベットで好きな言葉を記載できる。球場外野広場に設置した。2010年の開設にちなんで1枚2万100円。少し高いが名誉なことなので僕も応募し、外野21号門付近にはめ込まれた。Koshien foreverと書いた。

 今年の選手権は8月6日から高校野球100年記念として始まる。炎天下の観戦に疲れたら、またお目当ての試合時間待ちには冷房の利いた歴史館は、絶好のお勧めです。素晴らしい歴史に触れることができます。

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