【高知・新多内野手】文＝高田博史

　「新多」という登録名が、高知のファンに浸透しつつある。

　今年は石井姓の選手が２人いる。さらに石井大智と田久見大地の２人が同じ「ダイチ」であるため、石井新多が球団からの申し出に応え、名前で登録されることになった。

　ルーキーながら試合に出続けている。内野も外野も守れるユーティリティー・プレーヤーだが、本来の持ち味はパンチ力のある打撃だ。

　これまで自分はアベレージ・ヒッターだと思っていた。だが、駒田徳広監督（元巨人ほか）は、さらに魅力を引き出させたいとフォーム修正を勧めた。すり足をやめ、左足を上げてタイミングを取るフォームに取り組んでいるところだ。

　「あまり打率にこだわるのはやめようと思っていて。それよりも、一本の質のいい打球を飛ばせられたらいいなあと思っています。アーチ系のバッターではないので、間を抜く強い打球、パンチ力のある打球を全方向に打てたら」

　父・孝次朗さんが日本ＩＢＭ野洲（２００８年に解散）で内野手だったこともあり、気が付けばいつも野球がそばにあった。家庭の事情のため、大学２年で野球部を退部している。離れたことで熱が冷めかけたこともあったが、バットを振りたがっている自分がいた。

　その後、野球教室で子供を指導するアルバイトをしながら、クラブチームでプレーを続けた。多くの人との縁がつながり、いまこうしてファイティングドッグスのユニホームを着ている。

　「結果も出さなきゃいけないと思うんですけど、まずは自分のなかで駒田監督に認めてもらう。バッターとして駒田監督に認めてもらうことが、自分の目標ですね。もちろん優勝してＮＰＢに行くというのは大前提なんですけど」

　ダメならここで終わり。そんな覚悟をもって四国に来た。やるしかない。

　「新多」という名前は、両親が付けてくれたものだ。

　「新しいことに多く挑戦してほしいという意味だと、聞いたことがあります」

　プロ野球選手として、さらに上に進むのか。それともここで終えるのか。新たな挑戦が始まっている。