愛媛・久保 母のためにも…続けてきた野球をやれるとこまでやりたい
【愛媛・久保潤也投手】文=高田博史
ホームで迎えた開幕戦(3月31日、坊っちゃん)で、愛媛は巨人3軍を相手に白星発進した。試合後、球場コンコースも沸き立つ。応援団『愛勇会』の面々が、きょうのヒーロー・久保潤也をたたえた。
「よくやった!よくやった!くーぼ!」
入団1年目の右腕が、初の公式戦登板で完封勝利を挙げた。ルーキーにとっては思いがけないことだったのだろう。応援団からのエールに目を丸くしている。
「チヤホヤされて、いい気分になって。けどこれ、負けたときとか怖いなあと思いました。ヤジ、ボロクソ飛んで来るんやろなあと」
だが、そんな心配は必要なかった。対徳島前期1回戦(7日、アグリあなん)で8回1失点と好投し、2勝目を手にしている。
しかし、ここまでの野球人生は決して輝かしいものではない。高校時代、初めての公式戦登板は3年春である。最後の夏は、1試合でリリーフ登板したのみ。大学時代も3年時の2試合しか公式戦での登板がない。
それでも子供のころからの「プロ野球選手になりたい」という夢は捨てなかった。だから、次の道にアイランドリーグを選んでいる。
「小さいころから貫いてきたものがなかった。唯一、野球だけずっと続けてきて、水泳とかもやめましたし。せっかくお母さんもお金出してくれて、ここまでやってきたので。やれるところまでやってみたいなあと。途中でやめてしまったら、いままでがもったいないというか、申し訳ないっていう気持ちもあるので」
小5で父を転落事故により亡くしている。母・春美さんに女手一つで育てられ、ここまで野球を続けさせてもらった。プロに行きたいという夢をかなえるため、母はいまも背中を押し続けてくれている。
「もちろん、自分のためにっていうのがメインなんですけど……」
照れ隠しをするように言った。強い感謝の気持ちがあることは言うまでもない。初勝利した夜、母から携帯に「おめでとう」のメッセージが届いている。
最高のスタートを切った。四国で納得がいくまで野球をやり切る。挑戦は、始まったばかりである。