高知・宮下、野球選手から生姜農家へ 「やりたいことが見つかった」

 【高知・宮下黎内野手】文=高田博史

 倉庫には、生姜(しょうが)の入ったケースがうずたかく積み上げられている。種にする生姜をちょうど良い大きさに割ると「カッ!」と心地よい音が響く。

 土佐市で生姜を生産している野中攻さんが言う。

 「初めのうちは畑も種も道具も、何もかも借り物でやらないかん。儲けなんてない。どこまでガマンできるか。まあ宮下、勢いだけはあるから(笑)」

 宮下黎は高知で4年間の現役生活を終え、農家になる決心をした。そのまま高知に残り野中さんたちから農業の指導を受けている。

 自分の力を発揮し尽くした。9月の終わり、球団に引退する旨を伝えている。駒田監督や梶田社長から、就職先をいくつか勧めてもらった。なかには球団職員として働く選択肢もあった。

 毎年10月になると、選手たちの間では生姜の収穫を手伝うアルバイトが恒例となっている。

 「(将来を)考えている時期と、生姜を収穫する時期とがかぶるんです。もともと興味はあったんですよ。農作物を作ること、人に食べてもらうこと、それを仕事にすることに、すごく魅力を感じて」

 なりたいものが、プロ野球選手から農家に変わった。大阪の両親に「やりたいことが見つかった」と伝えると、快く受け入れてくれた。

 「いままで野球に対して、ホンマにめっちゃやってきたので。持ち前の努力を重ねて、生姜農家としてやって行きたいと思ってます。苦労もするだろうけど」

 外野も内野も、捕手にも挑戦した男だ。ガムシャラな姿を誰もが知っている。

 駒田監督が「お前をプロに行かせることはできなかった。無理難題をワーワー言って、ほんまごめんな」と言ってくれた。頑張ったことが報われたと思う。

 「悔いもないし、めちゃくちゃ幸せやし。いい分岐点に出合えて、やりたいことが見つかった。今の人生を充実させてくれているのがアイランドリーグです」

 取材が終わり、2人で野中さんのところにあいさつに行く。宮下が指さした軽トラックの座席の背もたれには、現役時代の写真がモチーフとなった応援グッズのうちわが飾られていた。

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