愛媛・古川やりきった2年間…過去最高の数字残し新たな道へ
【愛媛・古川敬也外野手】文=高田博史
古川敬也が残した打率・383は、アイランドリーグ13年間で過去最高の数字である。
「僕の記憶が正しければ5月以降、全部4割(以上)打ってるんですよ」
5月第1週に「打撃十傑」に顔を出すと、第4週に・347を残し、初めてトップに立った。以降、3位以内をキープし続ける。
50試合を超えた8月第4週、ザック(高知)をかわして再び打率トップに立った。そのときの打率が・375である。9月に入り、さらに成績を上げ続けた。
昨年、1年目に・226しか残せず、自虐的な気持ちになったことがある。弓岡敬二郎前監督(オリックス2軍ヘッドコーチ兼育成統括)の激励もあり、2年目の挑戦に臨んでいる。
大きく変わったのは1年間、シーズンを通して戦うための心構えだった。
「去年は結果を出さなあかん!っていう思いが強かった。一喜一憂したというか、打てなかったら悩んだり。年間続くことなので、そこを割り切れるかどうかが結果を残す上で大切で」
打てても打てなくても気にしない。考えていたのはバットの芯で捉えられているか。ミートできているか。
安打が出ない日もある。打球が野手の正面に飛ぶ日もある。そんなときでも「ボールを捉えられていれば大丈夫だ」と考えられるようになった。
首位打者がほぼ確定するなか、後期優勝の可能性が消えた。萩原淳コーチ(元オリックスほか)が「4割を狙え!」と鼓舞する。達成には残り2試合で4安打以上が必要だった。
それまで、ただ打つことしか考えていなかった。記録を狙ったことで、何かが乱れたのかもしれない。7打数1安打。最後の打席で意地の内野安打を放つ。
「やり切った感はすごいです。これでNPBに行けなかったのなら、自分のなかで諦めもつくので」
2年間暮らした選手寮を出るとき、特別な感情は湧かなかった。未練はない。
「その時点では、もう切り替わっていました。野球はここで終わりって……」
誰も届かなかった「・383」を残し、社会人として新たな道へと進む。