高知・宮下 2度のコンバートも自分の可能性信じてNPB目指す
【高知・宮下黎捕手】文=高田博史
練習中、宮下黎が駒田徳広監督(元巨人ほか)から声を掛けられた。
「おまえ、きょうからキャッチャーな」
もう、驚きしかない。
小4で野球を始めてから、ずっと外野手だった。ちょうど昨年の今ごろ、三塁手への転向を命じられている。周りも認めるほどの練習量の多さで、なんとかこなせるようになった。
「去年、サードができた。……できたって言ったってまだまだですけど、それなりにできた自分がいて。監督さんは見抜いてたのかな、と思ったんですよ」
しばらくして、捕手のフットワーク練習中、監督の口からポロッと漏れた言葉を聞き逃さなかった。
「……やらせてみたかったんだよ」
2度目のコンバートにも、何か理由があるはずだ。自分の可能性を見いだしてくれようとしているんじゃないか。やってみよう--。
駒田監督は、才能が開花することに期待を掛ける。
「うまいですよ。セカンドスローもいいし、一生懸命、体を張って止めるのをいとわない子だから。ダメだったら、それまでなんですよ。乗り越えるくらいの気持ちに期待して。きょうも叱り倒してきましたよ!」
プロ野球選手として生きて行くための可能性が、広がるかもしれない。新たな挑戦にも迷いはなく、いま必死に練習を続けている。
「この中断期間をすごくいいふうに捉えてるんですよね。自分を見つめ直す期間やと思っているので。この機会があるからこそ、自分がどうしたらいいのか?とか考えられたり」
どうしても、なんとしてでもNPBに行きたい。同じ練習をやっていても壁は越えられない。なりたい自分の姿が明確だから、とことん練習する。
「チームの勝ちに貢献したいし、勝つともっとアピールする場が出て来る。ファイティングドッグスからNPBに行きたいという思いが、いま一番強いです」
「黎」という名前は、国語教師である父・薫さんが付けてくれた。「夜明け」を表す「黎明(れいめい)」から取ったものだ。
まぶしい朝の光が差し込むその日を夢見て、努力を続ける。