高知・丸山、練習生から“出世” 思いのこもった「37」
【高知・丸山雄大投手】文=高田博史
丸山雄大が駒田徳広監督(元巨人ほか)から「頭、行くよ。4月1日、よろしくな」と開幕投手に指名されたのは、開幕5日前のことである。度胸と制球力の良さが決め手だった。
緊張で足が震えたが、投げられるうれしさのほうが勝っていた。
「変化球で逃げたらやられるなと思ったので『思い切って、ど真ん中へ真っすぐ投げてやろう!』ぐらいの気持ちでストレートを投げてました」
ソフトバンク打線を七回まで無失点に封じ込めた。昨季終盤、3連勝でシーズンを終えている。年をまたいで手にした4連勝だ。
これまでの野球人生で、いくつかのターニングポイントを経験している。
大学卒業後、就職して軟式野球を続けたが、硬式野球への思いを断ち切れず、退職してクラブチームに入団した。さらに上を目指したいと、アイランドリーグの長期トライアウトを受験する。失敗しても前チームには戻れない、退路を断っての挑戦だった。
高知では練習生からスタートしている。そう簡単に選手契約を勝ち取れるとは思っていなかった。きっとチャンスはそう多くない。1回で結果を残すことだけを考え、準備を続けていた。
「ここで失敗したら、もう今年で終わりだろう。野球も終わりだろうって思ったぐらいの投球でした」
勝負を懸けて臨んだ初登板(16年8月10日、対徳島後期2回戦)2イニングを無失点で乗り切る。その後もシーズン終了まで「失敗したら使ってもらえない」という危機感は、ずっと消えることがなかった。
今季は契約選手としてスタートし、先発ローテ入りどころか2戦2勝とハーラー単独トップに立っている。
入団前、練習生であることを理由に愛着のある背番号「18」をもらえなかった。30番台を選んだのはサイドスローに多いから。今年、番号を変える話もあった。
「あえて変えなかったのは『練習生から上がって来て、試合に出てるんだぞ!』という自分のなかの自信にしたいから。あとはファンの人に覚えてもらいたい」
背番号「37」には、強い思いが込められている。