転んでもタダでは起きない首位打者
【徳島・大谷真徳外野手】
大谷真徳が本塁上で左肩を脱臼した5月22日、診察結果は「2カ月間安静」だった。だが、17日後には早くも代打復帰を果たす。さらに6日後、DHで先発出場。6月29日には三番・右翼手として本来の位置に戻った。
「ちょうどあれから2カ月経つんですけど、そろそろ復帰ぐらいなんですね、ホントだったら。早すぎますね。でも、休んでる暇ないんで」
8週連続で首位打者に君臨する。首位を独走中の徳島にとって絶対に欠かせない存在だ。
戦列を離れた約2週間、2つの発見があった。1つは広島から育成派遣中の小松剛にもらったアドバイス。「いい治療院がある」と紹介してくれたのも小松だった。
「ここで焦らないで自分を見直すっていうか。『そういう時間に充てた方が、ケガが治ったあと成長できるんじゃないか』と言ってくれて」。左肩を固定しながら下半身のトレーニングを続けた。
もう1つ、ランナーコーチに立ってみて気付いたことがある。「打席に立ってるヤツがめっちゃ力んでるのが分かるんです。僕も周りからこう見えてんのかな、と思って。そういうのが見えたら勝負できない」
復帰後、一皮むけたかのように安打を連発している。「落ち着いて打席に入ることができている」と言うそのきっかけは、昨年秋にあった。
四国でドラフト指名を待つためにフェニックス・リーグ開催中の宮崎を離れた最終候補者たちと、宮崎へ向かう大谷ら第4次選抜メンバーが入れ違ったのは、豊後水道を渡るフェリー乗り場だった。その悔しさを秋冬の練習にぶつけた。練習で自分に嘘をついていないからこそ、静かな気持ちで打席に立てる。
「常にもっとやれる!という自分がいるんで。その『もっともっと』を追求していかなきゃな、とは思いますね」
取材後の握手、右手に硬いマメの感触が残った。