日本とWBC同組の中国 メジャー経験選手招聘で面白い存在に

 WBCでは日本と戦うB組に配された中国。

 2008年の北京五輪での1勝を目標にして“プロ化”が図られたのは02年のことだった。当時からMLBがビジネスとして協力する形で参入し、コーチの派遣や、逆に有望な選手がいればMLB参加のルーキーリーグやアカデミーに招くなど、目に見えた活動をしていた。しかし五輪終了とスポンサー(主に日系企業)の撤退に伴い、毎年のようにリーグの形式は変わり、近年ではなんとかリーグ戦を消化して組織の維持に懸命となっている。

 だから、というわけではないが、これまではとかく格下に見られ、関心度も決して高くはなかった。なにより選手の台頭が、残念ながら見られなかった。 

 だが今回は、面白いチームとなりそうだ。国内リーグからの選抜だけではなく、メジャーやその傘下でのプレー経験がある中国系選手の招聘に積極的だからだ。

 まずは、パナマ系中国人として知られるブルース・チェン投手(元インディアンス)が中国代表として“現役復帰”するだろうとMLBのWBCサイトが報じている。チェンは今年で39歳になる。パナマ生まれの左腕で、1993年にアトランタ・ブレーブスと契約。ボルチモア・オリオール時代の05年には13勝、10年から3シーズン連続で2ケタ勝利とメジャー通算82勝(81敗)を誇る。15年に引退しているが、当時の持病であった椎間板ヘルニアの状態が改善されたのだろうか。

 チェンはこれまでWBCには第1回、第2回大会ともにパナマ代表として出場していたが、中国代表監督を務めるジョン・マクレーンからの強い呼びかけによって腰を上げたようだ。年齢とブランクには不安も残るが、ベテランの元メジャーリーガーが中国に加わる意味は、後の東京五輪などの国際大会への布石、可能性の広がりとしても意味がある。 

 マクラーレン監督は、30年間でのべ8球団で監督、コーチを務めてきたキャリアを持つ65歳。第3回大会の代表監督も担っていた。彼の主導のもと、今大会でのチーム力アップのため、MLBの中国系選手への声がけが積極的に行われてきたという。

 WBCの規定では、国籍に限らず、出生地や両親の出身国など出自を証明できれば、本人の意思で参加国代表を選択できる。  

 結果、今回の中国代表では、以下の選手たちも最終リストの一歩手前まで残っている。

○バンス・ウォーリー(30歳・右投手、オリオールズ) メジャー7年、139試合33勝30敗、3.75

○コルテン・ウォン(27歳・二塁手・カージナルス) メジャー4年、416試合打率.370、28本、126打点。

○オースティン・ブライス(25歳・右投手・マーリンズ)昨季メジャー昇格。15試合0勝1敗、防7.07

○キーン・ウォン(22歳・二塁手・レイズ傘下1A~2A)マイナー4年、289試合打率.290、8本、138打点。

○ジョーイ・ウォン(29歳・遊撃手・ロッキーズ傘下3A)マイナー8年、645試合打率.327、14本、211打点。

○レイ・チャン(34歳・三塁手・レッズ傘下3A)マイナー13年、855試合.365、26本、303打点。

○キーユァン・シュ(21歳・一塁・外野・オリオールズ傘下)マイナー1年、33試合、打率.284、0本、9打点。

 いずれも親が中国、香港などからの出身者で選手本人は米国生まれがほとんどだが、彼らすべてが招聘に応じれば、かつての中国代表とはまったく異なるチームとなる。

 これまで、東アジアの、いわゆる“野球発展途上国”ともいえる国の代表として元メジャーリーガーが参加した例はない。ただ第2回大会の世界予選が08年11月に台湾で開催された際、タイ代表としてジョニー・デーモンが参加したことはあった。当時の関係者の話を思い返しても「タイの若い選手がスーパースターであるデーモンとともにプレーしたこと自体、これ以上ない刺激となった」という言葉は印象的だった。実際、チームに加わっても献身的で“母の故国への恩返し”という想いも強かったという。

 ただ現実的にひとりのスター選手が加わっても、単に“助っ人”が加わったに過ぎない。デーモンの場合も、事前のタイでの練習には参加はなく、大会開催地である台湾の空港で合流し、別れるときも現地解散だったという。ホテルも別で選手と接触するのはグランドだけ。そう聞いたときは残念さが先に立ったが、関係者は「元メジャーのスター選手なら、それは致し方ないでしょう」と現実を口にしていた。それでもともにプレーした意味はあったという。 

 今回、中国のケースがどうなのか。おそらくホテルは一緒だろうが、言葉の問題もあり(MLB系の選手は多くが中国語を解さない)、グランドだけでの関わりがほとんどだろうと想像される。元レッズで3Aでプレーするレイ・チャンの場合は、第2回大会から参加しており今回も代表合宿にも加わっているというから、あるいは上記のメンバーも単なる助っ人的存在にはならないかも知れない。 

 なお韓国でプレーする周権投手も招聘を受けたが辞退している。周権は中国生まれの21歳。母親とともに11歳のときに韓国に渡り、帰化。昨季はプロ2年目ながらも28試合に登板して6勝8敗、防御率5.10の成績を残していたが、昨季の疲労と今季のための調整を優先し、辞退となった。

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