韓国&台湾のドラフト事情 フランチャイズ制めぐる違い

 6月27日、韓国と台湾で同日にドラフト会議が開催された。といっても韓国は『1次指名』と称して各チーム1名だけ指名し、8月にまた「2次」を行う。台湾は『新人選秀会』と称し、今年は4チームで36名が指名された。

 それぞれ、同じドラフトでも色合いが異なる。韓国の場合、毎年のように変更がなされているが、基本的には指名する機会を年2回に分けている。1回目は縁故地出身の選手を1名、優先的に指名する。各チームのフランチャイズにある高校を卒業、もしくは卒業予定の選手を指名できる。例えば昨季、韓国一になった斗山はソウル特別市。サムスンは大邱広域市といったように定められている。

 この「縁故地指名」は、形を変えてもプロが発足した1980年代初頭から続いてきた。そこには野球界には留まらない、韓国の地域性が垣間見える。

 地元出身の選手なら自然と関心を持ち、応援もする。たとえば90年代。ソウルの試合ではKIAの前身であるヘテとのカードとなると、三塁側スタンドから観客が埋まっていった。ヘテは南西部の光州が本拠地。つまり仕事を求め大都市ソウルに流出している光州出身者たちが、故郷のチームを応援しようと駆けつけていたのだ。当時は宣銅烈なども全盛期で、ヘテは盟主とされた。故郷のチームがソウルのチームを叩く快感。そんな見方も多かった。

 加えて韓国では、プロが縁故地の高校に経済的な支援をしていた。用具も安くなく、遠征などでの費用もかかる。そうした面をプロが「底辺拡大の一助」として支援していた。しかし縁故地制は、プロチームの戦力格差をも生じさせた。地域によって高校数も異なれば、レベルの差もある。そこで現在は前述の1次ドラフトでの優先指名だけ残し、2次では地域に関係なく、ウェーバー順で指名していく。ちなみに今年も1位指名が行われたが、すべて投手だった。

 ロッテは釜山高のユン・ソンビン投手を指名。身長195センチの恵まれた体躯から、最高球速153キロを投げ込む触れ込みの右の本格派。メジャーから120万ドルの提示があったという噂も伝わっていた。斗山は東国大のサイドハンド、チェ・ドンヒョンを指名。今春まで大学通算47試合で17勝2敗、防御率3.25。昨年のユニバーシアード大会にも参加していた。ちなみにロッテのユン・ソンビンは早々にロッテと契約金4億5千万ウォン(約4500万円)でサインしている。

 台湾では、指名対象を決める過程が面白い。まず各チームが指名対象選手のリストを連盟に提出する。また数日前にはそのリストに漏れた選手から志願者を募り、「トライアウト」を実施。ナショナルチームの出場選手は別途、リストに加えられている。さらには「自己推薦」もある。

 トライアウトが始まったのは、2000年のこと。指名漏れを防ぎたい連盟の思惑と、実績がなくとも「プロへの道」が開かれる選手の希望が重なった結果だ。今年は80名が“合格”してエントリーされ、結果、4球団で8名が指名された。九州より小さい島とはいえ、専任のスカウトを置くチームも少ない。こうした複数の方法で選手を拾い上げていくのも、意味があるというわけだ。

 台湾は韓国ような縁故地指名はない。そもそもフランチャイズも近年になって強化された。発足当初はむしろ各チームが巡業のような形で全島をまわるほどだった。「本拠地を置かず、広く全チームに馴染んで貰うため」と関係者に聞いたことがある。そのせいか大都市の台北より、地方カードの観客が多い。またプロ野球の選手も、いわゆる「原住民族」の比率が4割強と高いことも起因しているだろうか。彼らの多くは島の東南部出身に集まっているから、早い話、それ以外の地域はすべて「アウェー」となる(ちなみに東南部に本拠地を置くプロチームはない)。

 台湾の課題は、毎年のように有望選手が海外(とくにメジャー)に行くことだろう。ドラフト終了を待つように、7月4日、宋文華投手(国立体育大学)が契約金50万ドルでサンディエゴ・パドレスと契約した。身長187センチ、球速はMAX154とまだ素材のレベルとはいえ、台湾プロに入れば即戦力。

 それでも近年のドラフト会議は、ネット中継あり、開場には各チームの監督が参加し、指名していくなどのショーアップも熱心になっている。

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