台湾球界の明と暗…盟主前期Vと身売り

 先週、先々週と台湾プロ野球界では明暗を分ける出来事があった。

 “明”は、さる6月10日、中信兄弟が前期優勝を決めたことだ。2位に7ゲーム差を付ける、ぶっちぎりの優勝だった。要因はいくつも挙げられるが、どうしても目に入ってしまうのはその攻撃力だろう。“台湾球界の顔”ともいえる林智勝(リン・ツースン)内野手を彼の地では初となるFAで獲得。元々、周思斉(チォウ・スーチィ)、 彭政閔(ポン・ツェンミン)、 蒋智賢(ジャン・ツーシェン)といった顔ぶれの打線は巧打者揃いで昨季も後期優勝を果たしていたが(元阪神の林威助も忘れてはいけない)、そこに31本塁打、124打点、打率・380(記録は昨シーズン)の林智勝が加わったのだ。また以前にもこのコラムで記した、台湾でのシーズン連続安打記録を振り替えた 張志豪(チャン・ヅーハオ)もいる。このままでもWBCに臨めそうな布陣といっても、あながち言い過ぎではない。優勝を決めた10日までのチーム打撃成績は、54試合でヒット691、得点449、83本塁打……。他国の数字を単純には評価しにくいとはいえ、いずれも他チームに比べ突出している。

 ただ実際の試合内容からすれば、単純に「打つだけのチーム」ではないことが分かる。元来、繋ぎと機動力で得点を挙げてきたのが中信兄弟の路線だった。それは林智勝らが加わっても変わらない。その表れが三振の少なさと四球の多さだ。三振はチーム全体で323でリーグ最少。四球は406で最多。つまり単純化すればヒットも打つが、その実、三振少なく四球で繋がっている打線と言える。

 また中信兄弟が優勝した意味合いも大きい。同チームは90年のプロ発足後、兄弟エレファンツという名称で人気を博した、いわば“盟主の血筋”。2014年に金融グループである「中信」が買収したため経営母体は変わったが、根強いファンの声を受け「兄弟」という名称を残し、ペットマークも当時からの象のままにした。優勝を決めた当日の観客動員数は19483人。キャパ2万人の球場がほぼ満員になった。

 人気チームが優勝すれば、その熱気は球界全体に広がるか……などとうつつを抜かしていたら、その6日後である6月16日、4チームのうちのひとつ、義大ライノスが公式的に身売りを発表した。なんでも今季中に身売り先を募集し、ドラフトや後期も従来通りに行っていくという。実は水面下で、過去に台湾ウインターリーグのスポンサーにもなっていた『麗寶』というグループが引き受け手として噂されていた。台中のホテル、アミューズメント企業で、経営母体としても遜色ないとも見られていた。しかし今回の「身売り発表」は同グループは知らされていなかったとかで、スムースな移行があるかは不透明。むしろ「商談成立しなかったため発表に踏み切ったのでは」(台湾メディア関係者)という声もある。義大の幹部は「もし身売りが成立しなかった場合は来季も球団を保持する」と、解散しないことを明言しているが、言葉通り信用するファン、メディアは少ない。

 義大といえば13年に、元メジャーのマニー・ラミレスを年俸50万ドルとも言われる高額で招聘したことがあった。当時、41歳のラミレスがどれだけプレー出来るのか、いやそれ以前に、本当に台湾にやってくるのか、と訝しがられた。しかし実際に来台し、プレーする姿は全盛期の威力こそないものの、それでも精一杯のパフォーマンスでファンを涌かせた(6月にはホームシックから帰国してしまったが)。

 そんなビックネームの補強という“チャレンジ”をしたチームだったが、いかんせん後が続かなかった。

 人気チームの隆盛と、新興チームの身売り。現在の4チームから、5、6チームへの復活。それが台湾プロ野球の目標であり悲願だが、またもや遠くなりそうなのが残念だ。

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