21世紀枠の先輩がアドバイス 「自分達の野球を甲子園で楽しんで。それだけでいい」

 第91回選抜高校野球大会まで残り1カ月を切った。暖かくなっていく気候とともに高校野球ファンの胸も高鳴っていく。秋に新チームがスタートし、秋季大会の結果を参考に選抜される訳だが、さらにそこから一冬越える事で、ピッチャーなどは下半身が大きくなり球威、球速が格段に上がる。2012年の女満別・二階堂誠治投手や16年の明石商・吉高壮投手の(一冬を越えての)太ももの張りはいまだ忘れられない。

 つまり、春はチーム自体がガラッと変わる故に戦力分析が非常に難しい。秋の明治神宮大会で勝ったチームは選抜で勝てないというジンクスがあるのも、こういった事が要因かもしれない。ただ、こういった予測不可能な所も醍醐味なのだ。

 そして選抜といえば21世紀枠。これまで様々な高校が甲子園を熱く盛り上げてくれたが、個人的に03年の隠岐は強く印象に残っている。僕自身も兵庫・淡路島出身という事もあり、隠岐の島からの甲子園出場は特別なものだった。結果は初戦で浦和学院に15-1で敗れたが、前年選抜ベスト8の立役者であった須永英輝投手率いる関東の雄に果敢に向かっていく“隠岐野球”に胸をうたれた。

 その隠岐でエースと4番を務め、大黒柱として活躍した白野勝さんと出会ったのは2年前のこと。知人を介して島根・松江で飲み明かした。彼は、自らの結婚式前日にもかかわらず遅くまで付き合ってくれた。気さくでよく喋る方だが、こちらから聞かないと甲子園の話は全くしない。

 秋の島根大会で優勝。準々決勝・江の川戦は9回1死までノーヒットノーランだった事も後で知ったらしく…。ちなみに江の川は、この年の夏の選手権で島根県勢80年ぶりのベスト4を成し遂げたチーム。僕なら(江の川戦の好投を)8時間くらい自慢話してしまいそうだが、いい意味で飄々とした感じがまた根掘り葉掘り探りたくさせる。

 小学校の頃に出場したわんぱく相撲では、身体はガリガリにもかかわらず天性の身体能力で勝ち進み、隠岐の島で準優勝。決勝で勝っていれば「両国国技館でできた」と悔しそうに語ってくれる。相手はデカかった?の質問に「(大相撲力士の)隠岐の海です。地元の同級生なんですよー」と笑っていた。

 甲子園については「あっという間に終ったので何も覚えてないというか地に足がついていなかった」という。得たものも「これといってない」が、今でも仲間と集まるとそのネタになると語ってくれた。そんなエピソードを語れること自体が、もうすでに大きな財産である。

 ただ、試合での不甲斐ないピッチングについてはいまだに悔しく、当時の嶽野正樹監督と共に16年たった今も映像をみることが出来ないそうだ。悔しさと情けなさで観ることはできないが、もう一度行けるなら挑戦したいのだという。「それが出来ないのが一発勝負の世界なんですよねぇ」と笑顔で隠岐誉をグイッと飲み干した。

 高校卒業後は奈良産業大学(現在奈良学園大学)に進学し、捕手として桑原謙太朗選手(阪神)や蕭一傑選手(元阪神)とバッテリーを組み活躍。現在は地元の島根県に戻って働いている。

 最近、久しぶりに連絡を取ってみて、選抜に出場する選手に伝えたいメッセージはと聞いてみた?

 「とにかく自分達の野球を甲子園で楽しんでほしい。それだけでいいと思います」

 それぞれの想いが今年も選抜を盛り上げる。

  ◇  ◇

 かみじょうたけし(本名・上条 剛志)1977年12月31日生まれ、41歳。兵庫県淡路市出身。中学、高校時代はソフトテニス部。龍谷大卒。お笑いコンビ「ロビンス」で活動後、現在はピン芸人。高校野球大好き芸人として知られる。趣味・特技は競輪予想、モノマネ。

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