星稜総監督の山下智茂氏（７２）が全国の指導者を巡り次世代の高校野球を考える企画。今年のセンバツを最後に勇退した報徳学園の永田裕治前監督（５３）と、教え子で部長から新監督に就任した大角健二監督（３６）を山下氏が訪ねた。伝統を引き継ぐ者と受け継ぐ者。２人の指導者の思いを５回にわたってお届けする。

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　大角健二監督（以下、大角）「僕は（捕手だった）大学ではケガで投げられずメンバー外にもなりました。いつも心のどこかでプレーしたい、プレーしたいという気持ちで、野球がストレスになってしまって、大学で終わって救急救命士になろうと思っていました。なので、戻って来いと言われた時には『また野球か…』って（苦笑）。でも、竹村先生がいなくなった分をお手伝いしようと。大学５年目で単位をとって（母校を）お手伝いしながら通信で（教職課程の）残りをとりました」

　永田裕治前監督（以下、永田）「教職もとっていなかったので時間はかかると思ったけど、こちらも腹をくくって呼びました。コーチで１０年、部長で４年。（部長として）ベンチにも入れたので、そろそろかなと」

　－改めて何か伝えたことは。

　永田「僕自身、こんなんで勝てるかと言われながらも、好きなようにやらせくれと言ってやってきた。大角にもお前の人生やから自分のやりたいようにやれと言っています。ええとこは残して悪いところは外せばいい」

　－山下氏も教え子が星稜を率いている。

　山下智茂氏（以下、山下）「（林和成監督と山下智将部長には）僕もあまり口出ししないようにしているけど、部長は息子だからね。好きなようにやりなさいと言っても、見ていたらイライラして疲れる（苦笑）。いいものは残してほしいし、変えなきゃいけなものは変えたらいい。ただ、そこで勝つ野球という部分がポイントになる。高校野球は人を育てること。１０年後、２０年後に報徳でよかった、星稜でよかったと思えるような人材育成をしないとね」

　－監督になった実感は。

　大角「正直まだ…。大会でメンバーを外れた子たちを見て実感するのかも。まだ感情が揺さぶられるような体験はしていません。今までは、永田先生がどうするのかなって予測して動いていたけど、今は自分でこうしたい、ああしたいと思うところが違います」

　山下「永田さんは、これだけ大人数でも皆同じ練習をさせる。名門校はどうしてもレギュラー優先でこんな学校はなかなかない。こういうやり方でやってきたのが、今年のセンバツ４強の大きな要因じゃないかな。アルプスとベンチが一体になっていたよね」【３】へ続く