【球数制限を考える10】名投手に共通する故障しない“手首が立つ”投げ方

 「高校野球 焦点・球数制限を考える・10」

 肩肘を壊さないために、技術的なポイントはどこにあるのか。高校時代に甲子園の土を踏み、プロでは先発、リリーフとして通算550試合に登板した阪神・久保康生2軍投手チーフコーチ(58)が、自身の経験を踏まえた上で語ります。着目したのはテークバック時の手首の角度。往年の名投手に共通するものが、肘を守る大切な要素になる。

 現役時代に2度の右肘手術を経て、90年代前半では異例となる39歳まで現役を続けた阪神・久保2軍投手チーフコーチ。その要因は何だったのか。

 「年々、体の力も変わってくるし、最後の方はいかに動力を小さくして大きなパワーを生み出すかがテーマだった。35歳くらいの時に大きな変革があって、投球フォームから徹底的にムダな動きを省いた。そこですごく大切なことに気づいた」

 ポイントは、テークバックを始めた際の手首の角度。腕と手の甲が90度になる“手首が立った”状態になることが、肘に最も負担をかけなかった。

 「リリースの時に手首を返そうと意識したらダメ。手首が立っていれば、リリースの瞬間、自然とボールの重さで手首が返る。これを自分で無理に返そうとすると、肘の内側にダメージが残る」

 指導の現場では必ず手首の角度を確認する。そして、往年の名投手の連続写真をまとめた本を常に携帯。江夏豊氏、ノーラン・ライアン氏など、手首の角度は共通している。

 「利き腕で窓を拭くイメージを持ちながら、そこからトップに上げていく。体を回すと掌底が前面に出てきて、腕を限界まで前に伸ばせば自然と手首が返る。これがボールを前で放すことにつながるし、トップの位置で打者とのタイミングを外すこともできる。(阪神の)メッセンジャーは手首が立って、理にかなったフォームだから毎年、あれだけ投げても故障しない」

 ボールの出どころを隠すフォーム、タイミングを外すために特殊な動きを入れたフォーム。金属バット導入後、高校野球の現場でもその傾向は強まった。

 「昔、金田さんが400勝したり、小山さんが5000投球回近く(4899回)投げたり。もちろん技術の向上、道具の向上はあるけど、そこまで投げられたというのは、投球フォームがシンプルで故障しない投げ方をしていたからだと思います。近鉄時代、稲尾さんから『投手は手首を返したらダメ』と言われた。『手首は勝手に返るもの』だと。そこを間違えたらいけない」

 投手の球数制限。この難題に久保コーチは技術的視点から語る。

 「投げ込みは必要だと思います。投げる動作を体に覚えさせないといけないし、30球から40球でゲームが終わることはない。そして今の選手は1球目から全力で投げようとする。投球で大事なのはリラックスして、タイミングよく、バランスよくリリースすること。それは投げ込む中で、5~6割、7~8割と力の段階を上げながら見つけていかないといけない。不要な力を抜くことが、故障防止にもなる。ムダを省くための方法を、投げ込む中で考えてほしいと思います」(おわり)

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