【球数制限を考える8】“腹八分”で緩やかに確実に成長曲線を上げていく

 「高校野球 焦点・球数制限を考える・8」

 数多くのプロ選手を輩出し、昨秋ドラフトでも藤平尚真投手が楽天に1位指名された横浜高校(神奈川)。一昨年8月から指揮を執る平田徹監督(33)は、高校球児の成長にも“超回復”が不可欠だと語る。猛練習の伝統は受け継ぎつつ、積極的な休養をより重視するようになった。名門の若き指導者が考える現代の育成法に迫る。

 横浜では野手も含めて、週2~3日はノースローの日を設けている。週1日のオフに加え、トレーナーの指導のもと、体幹トレーニングなどに充てるのが週1~2日。野球はしても、投球、送球をしない日がある。平田監督は「投げることに関しては、週4日みっちりやれば十分だと思う」という。そして、こう続けた。

 「回復する時間が、高校野球には足りない。追い込まないと指導者は教えた気にならないけど、常に“腹八分目”を心がけないと。休養は絶対に必要。回復する時間を与えてあげないと、練習の強度が上がっていかない」

 練習が厳しくないわけではない。投手は最大200球のブルペン投球をする日もある。ただし、多く投げ込んだ翌日はノースロー。2日目は様子を見て軽いキャッチボール…といった具合に、負担をかけ続けることはしない。それが選手の意欲にもつながる。

 「緩やかだけど、着実に成長曲線を上げていく。休みがあることで、気持ちも『さあ、やるぞ』と前向きになります」

 練習内容も変化してきた。体力強化では、ランニングの量を減らし、バリエーションをつけた。走ることは重要だが、多過ぎると選手が太れず、体が大きくならない。体幹トレーニングに加え、タイヤ押しや砂浜でのダッシュなど、多様なメニューで偏りを防ぐ。

 高校生は短期間で見違えるように伸びる。だからこそ、指導者の目配りが重要になる。球数制限について平田監督は「誰にでも分かる物差しは、それしかないのでしょうね。でも、マニュアル通りにはいかないですよ」と一定の理解を示しつつ、“正解”とすることには異を唱えた。

 「いい投げ方の子もいれば、負担のかかりやすいフォームの子もいる。注意深く観察するのはもちろん、本人の申告は割り引いて考えます。監督には言わない場合もあるので。部長、接骨院の先生、選手仲間にも様子を聞く」と説明。「また、普段から痛いと言える雰囲気を作っておくこと。『少しでも痛い時は絶対に言いなさい』と言っています。言わないと、メチャクチャ叱ります。『長期離脱される方がチームに迷惑をかける』と」

 昨秋の神奈川大会。横浜のエース・板川は延長十五回引き分け再試合を含め、8日間で4試合に登板した。その間は金子部長がつきっきりで状態を見守り、登板には必ずかかりつけの医師に可否を確認した。複数の目と耳で、何重にもチェックする。選手の健康を守るために、その手順だけは絶対に欠かさない。

 「高校野球は通過点。選手生命を縮めるような起用はするべきではないし、練習でも一人一人かけられる負荷は違う。選手を預かったからにはきめ細かく、うまく伸ばしてあげる。そこが指導者の一番楽しいところです」(続く)

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