【球数制限を考える7】子供は自分で調整できない
「高校野球 焦点・球数制限を考える・7」
大阪桐蔭・西谷浩一監督(47)が実践したクールダウンの重要性。そして今、医療的な視点を持つ“第3者の目”をグラウンドに入れている。
「中田の時に医者の先生から紹介されて、理学療法士の方がチームについて選手を見させてほしいと。ボランティアでいいからと、週1回、コンディショニングを見てもらった。その存在が大きかったんです。投手の肩肘をチェックしてもらい、故障者のリハビリメニューを組んでもらった。今は正式に契約して部位、部位で専門の先生を紹介してもらってます。子供は自分で調整ができない。そして高校野球は2年半という期間の中で、やりながら治さないといけないですから」
2012年に藤浪を擁して春夏連覇を達成。そんな大黒柱にも“故障の種”となるような異変がセンバツ後にあった。そこを指摘したのは理学療法士だった。
「ちょうどセンバツが終わった時に股関節の可動域が狭くなっていると言われたんです。そこで投げ続けると故障のリスクが上がる。それを直接、本人に言うと納得しませんから。そこは手を変え品を変えながら(笑)、夏に向けてのトレーニングをしようと。投げるよりも、もっとパワーアップしようと言って納得してくれました。だいぶ顔は不満げでしたが」
(続けて)
「藤浪は実戦で投げていたいタイプ。そうしないと感覚がつかめない。試合前にブルペンで投げた上に『シート打撃で3人だけ投げさせてください』と言ってきたりしていた。今はプロの調整法を身に付けていると思いますけど、高校時代は練習で低めへの意識をつけた子でした。指先の感覚を持っている選手ならいいですけど、前日もしっかり投げたい選手でしたから」
そこでノースロー期間を設定し、練習を走り込み中心へ変えた。
「高校生は3連投になる場合もある。その準備として肩肘のスタミナ、下半身のスタミナ、心のスタミナをしっかりとつけようと言いました」
様々な経験を踏まえた上で、西谷監督は球数制限についてこう語る。
「何よりも工夫が大事でしょう。物差しは人によって違う。そこを指導者が見極めないといけない。選手に聞いても必ず大丈夫と言うんです。だから指導者がストップをかけられるように。熱中症と一緒だと思うんですが『大丈夫です』を信じたら取り返しのつかないことになってしまう。そして選手には痛くなくても、セルフチェックを学んでほしい。自分の体を誰よりも自分が知ってほしいと思います」(続く)
※次回は多くのプロ野球選手を輩出した名門・横浜を率いる平田監督に迫ります。