【球数制限を考える5】自分のフォームを理解し自分のフォームで投げれば故障しない
「高校野球 焦点・球数制限を考える・5」
DeNA・久保康友投手(35)は2月の春季キャンプで、チームナンバーワンと言えるほどの球数を投げ込む。阪神時代には、1日に最高で354球という数字が残る。それでも05年のロッテ入団後、大きな肩肘の故障は一度もない。常に試合で投げられる状態を維持してきた。
「1試合を完投するには、ブルペンも含めてだいたい200球を投げないといけない。緊迫した場面で相手打者と勝負していく集中力、体力を考えれば練習で300球くらいは投げ込まないといけない。そこで自分の体にどういう変化が起こるか。何が足りないのか。例えば練習法として強度を上げての100球、力を抜いての300球、パターンは無限にあると思う。それを試すことで、自分にどの練習法が合っているかが分かる」
さらに故障のメカニズムについても、こう語る。
「自分の感覚で投げている時は、どれだけ投げても大丈夫だと思う。ただ下半身だったり、体幹だったり、疲れてくるとボールが行かなくなってるというのが投げていて分かる。それで無理に強いボールを投げようとして、力任せに押そうとする。それが一番、故障の原因になる。自分のフォームを分かって、自分のフォームで投げているうちは故障することはないと思う」
プロ生活12年で、先発、リリーフに限らず奮闘してきた久保。1500投球回を超え、通算93勝、生涯防御率3・66はトッププロの確かな証しだ。そんな右腕が、高校生にこんなメッセージを送る。
「今は100球以上投げると、悪いと言われる。でも試す権利は誰にでもあると思う。周りに言われるのではなく、自分がどういう投球をしたいか。自分がどういう可能性を持っているのか。それを投げないことによって、なくしてしまっているのであればもったいない。だから自分で選んでほしいと思っているし、僕もそうやって高校時代からやってきた」
(続けて)
「今のトレーニング理論は最先端で常識だと思われているかもしれないけど、科学は進歩していく。一昔前はこれが正しいと言われたけど、今はそれが否定されてできた理論の方が多い。すると未来はまた違った理論が出ると思う。だから常識なんて考えず、そのトレーニング理論が本当に自分に合っているのかどうか。自分に当てはまるかどうかを考えた方がいい」
その上で、こう結論づける。
「今やっていることも含めて、自分にとって何が正しいかを探してほしい。常に情報を更新して、レベルアップした自分の体のことも分かってほしい。この世界に確固たる正解はない。マニュアルはあるけど、そこに当てはまるかどうかも分からない。だから自分の道は、自分で切り開いてほしい」