【球数制限を考える3】選手と医療機関の懸け橋に「野球手帳」

 「高校野球 焦点・球数制限を考える・3」

 今、地方で肩肘を守る取り組みが進んでいる。その最先端を行っているのが障害予防を啓発する「野球手帳」「新潟メソッド」を作成した新潟県。高校野球だけでなく、少年野球を含め、球児の肩肘、そして未来を守ろうとする取り組みに迫った。

 野球手帳は2012年5月に、当時の小学5年生から中学2年生までに配布したのがスタート。その後、野球を始めた子供たちに随時、新潟メソッドと共に配布されている。当時、作成に携わった元新潟県高野連理事長の富樫信浩氏(現・新潟県立白根高校長)は原点をこう語る。

 「野球手帳を作成したのは、選手と医療機関の懸け橋になるようにという理由がまず一つ。肩、肘に痛みや違和感を抱えていても、なかなか病院に行く子供が少なかったんです。そして新潟県の高校野球を強くしたいという思いもありました」

 野球手帳ができたことにより、肩、肘の重度な障害は減少。昨年末には球場で小中高生を対象に大規模な検診とコンディショニング講座を行った。前年は900人だったが、およそ1500人もの球児が集まった。

 「医者による検診とエコー検査があり、どういう練習をすればいいか。親御さんにも理解を持ってもらおうと。今は少子化の時代ですから」

 少子化-。これが今、新潟県だけでなく各高校野球連盟の大きな課題となっている。純粋に子供の数が減ってきているだけでなく、野球自体を選択する子供も減っている。

 「もう一つの新潟メソッドは野球の普及という意味が込められている。野球って親御さんにとっても大変なイメージが強い。他のスポーツと比べれば道具代も高いですし。でも、野球はこんなに楽しいんだよと。野球を通して、友情を育んでいく狙いもあります」

 部員数が少なくなれば、1人の選手にかかる負担は増える。複数投手制は一部の強豪校でしか現実的には不可能だ。高校野球を次の100年へつなげていくには-。富樫元理事長はこう語る。

 「今、新潟では二極化が進んでいて、部員数が多いチームと、10人前後のチームで分かれてきている。難しい問題ですが、工夫をしていかないといけない。一つの方法論ですが、各都道府県がそれぞれで対策を考えていく。球児の肩、肘を守るためなら、休養日を設けて連戦を避ける。でもそれぞれ大会への出場校数も違うし、球場面などの環境も異なる。その違いがあるので画一的にならない方がいいと思います」

 実際に一部都道府県では、平日でも公式戦の実施が認められているなどの違いがある。

 「例えば甲子園に直結しない春季大会では、球数制限を設けてみたり、延長戦を廃止してみたり。そうした取り組みを少しずつでも考えていくことが、地方にとって大切ではないかと思います」(続く)

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