“逆転の広島”首位返り咲き 驚異の5月13勝V率0%から立て直す
「広島3-2中日」(21日、三次きんさいスタジアム)
リーグ3連覇中の王者が“定位置”に返り咲いた。広島・菊池涼介内野手(29)が、五回2死満塁から決勝の2点左前適時打。リーグトップの得点圏打率・455を誇る背番号33に導かれ、チームは今季2度目の8連勝で首位に躍り出た。破竹の快進撃はまだまだ続く。
バットに込めた思いが、一塁到達後に強く握った右拳に表れていた。菊池涼が均衡を破った先制の2点適時打は、今季初の単独首位浮上へ直結するV打。そびえ立つ山々に覆われ、1万3836人が集まった今年唯一の三次での一戦で、駆けつけた鯉党から割れんばかりの大歓声が送られた。
「今日は祐輔(野村)が作ってくれたから、僕のことはどうでもいいです」
試合後はそう謙遜したが、投手戦が続いた一戦で、味方が作った好機を生かした。0-0の五回2死満塁。フルカウントから3球ファウルで粘った9球目。「頑張って必死につなぎました」。大野雄の甘く入った直球を左前へとはじき返した。
一瞬も気を緩めない姿勢が値千金の一打を生んだ。前打席の三回2死一、三塁では空振り三振に倒れたが、粘って10球を投げさせた。食らいついて適時打につなげ「集中できているということですかね」とうなずく。4打席目の七回も9球の勝負で、大野雄に一人で計31球を投げさせた。昨季は打率・233に終わり、オフに何度も悔しさを口にしてきた中、今季は好状態を維持している。
勝負強さが光る。得点圏打率はリーグトップの・455。緒方監督は「いいね。打つ前の紙一重のところ、厳しいところはカットで逃げて、状態がものすごくいい」と称賛。迎打撃コーチも「我慢比べに勝った」と目を細めた。
今季最長タイとなる2度目の8連勝。5月13勝3敗1分けで月間勝ち越しも決めた。開幕から5カード連続負け越しで優勝確率0%のデータも出たが、立て直した。ただ、首位に立っても指揮官は「関係ない。勝つときでも反省することはある。しっかり反省しながらやりたい」と手綱を締めた。
チームは一切の慢心なく次戦に臨んでいく。「また明日頑張ります」と表情を引き締めてバスに乗り込んだ菊池涼。頼もしい男が赤ヘル打線をけん引している。