【高代延博氏の眼】攻守に精彩を欠く巨人 「打開策を求めるより一投一打を大切に」
「巨人2-3DeNA」(14日、東京ド)
攻守に精彩を欠く巨人が僅差で競り負け、再び3位に転落した。デイリースポーツウェブ評論家の高代延博氏は問題点を指摘したうえで、「巨人は打開策を求めるより、投打ともに1球を大切に戦うしかない」と語った。
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この日の試合を振り返れば、「打てない」という攻撃面の弱さが印象に残った。ただ、「これが敗因」という明確なものがない。逆に言えば、そこに“問題”があるのかもしれない。
巨人が打線を組むのに苦労しているのはよく分かる。坂本を3番にし、松原を2番に入れた。不調の丸を7番に据えて臨んだが、直接得点につながることはなかった。
今は6球団で最も攻撃に苦しんでいるのが巨人だろう。
だが、こういう状況だからこそ、一つひとつのプレーに気を配らなければならない。以下、気がついたシーンに触れておく。
三回一死から投手の山口が四球を選んで出塁した。ここで吉川は初球をセーフティー気味に転がし、走者を送った。
ベンチからのサインなら仕方ないが、この場面は右方向へ打球を転がし、あわよくばヒット、悪くても走者が入れ替わる。そんな攻撃をするべきだったと思う。
山口が二塁走者として残っても、シングルヒットで帰れるかどうか分からないからだ。
一生懸命プレーしているのは伝わってくるが、どうも歯車がかみ合わないというか、チグハグ。
八回の守りでは柴田の飛球に小林と岡本和がお見合いする形で小林が捕球できず、ファウルになった。攻守に精彩を欠くとはまさにこのことだろう。
先発した山口にしても、悪いなりに何とか粘りの投球をして、五回まで無失点に抑えていた。ところが六回、先頭の桑原にど真ん中のスライダーを本塁打された。
積極打法の桑原にあの球は禁物。たった1球のことだが、攻撃力が落ちている時は、その1球が命取りになる。
七回に山口をリリーフした田中豊も同じように初球を牧に捕らえられ、致命的な2ランを浴びた。
この“2球”は不用意と言われても仕方がない甘い球だった。
ラストスパートをかけるこの時期は、1つの試合の持つ重みが以前より増してくる。
さらに言えば、試合の中で流れを左右する1球に、投打ともより慎重さが求められてくる。
打開策も必要だが、それより一投一打を大切にする。最終的に順位を分けるのは、そういう野球ができるかどうかではないか。