球団オリジナル「マスクカバー」に込められた思い…楽天考案で他球団にも波及

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた野球界で、一つのグッズがファンの間で話題となった。楽天が5月に発売した「マスクカバー」。コロナ禍でファンとチームがつながるために考案されたグッズは、他球団でも発売されるなど大きな広がりを見せた。7月10日から有観客での試合開催が解禁されるにあたり、開発に至った背景、その思いを楽天野球団のマーチャンダイジング部・渡辺誉志部長(40)に聞いた。

  ◇  ◇

 年明けから国内で感染拡大を見せた新型コロナウイルス。プロ野球の開幕も当初の3月20日から大幅な延期を余儀なくされた。専門家から応援形式の感染危険度を指摘された時期。球団でも新たなグッズ開発へ手探りの議論が続いていた。

 「風船を飛ばしてはダメとか、タオルを使っての応援は?応援歌は?と、今より状況が分からない時でした。その中でファンが自分の好きな選手、チームを応援できるグッズが欲しいという話になったのがきっかけです」

 大きな声援を送れなくとも、マスク着用が義務づけられても、応援する選手へ思いを届ける。そうして生まれたのがオリジナル「マスクカバー」だった。

 5月1日から期間限定で受注生産販売が開始されると、期日を待たずに売り切れ。その後は第2弾、第3弾が発売。その流れは他球団へも波及。西武、ヤクルト、阪神などでも同様のグッズが登場した。

 チームカラーや、選手のロゴ入りマスクカバーを付けて球場へ-。球音が消えた日々で、それはファンの希望となったのかもしれない。渡辺部長も「お客さまにとって一つの楽しみを提供できたかなとは思います」と明かす。そして球団はファンへ一つの思いを込めた。ファンの手元に届くグッズに選手のイラスト入りステッカーを封入。そこには「明けない夜はない」のメッセージが記された。

 「開幕の日をともに目指しましょうというメッセージを入れたくて、シールを付けてお客さまに送らせていただきました」。その取り組みもファンのSNSで話題となった。

 「グッズだけがお客さまとつながれた時期で、いいコミュニケーションが取れたかなと思います」と渡辺部長。開発過程で業者からマスク自体の販売の売り込みもあったという。マスク不足が叫ばれていた時期。マスクを販売すれば厳しい環境下で収益を得られたかもしれない。だが…。

 「世の中でマスクが足りない状況で、われわれが金もうけのために売るのは違う。応援アイテムであることが大事だったんです」。あくまで『ファンの声を聞き、ファンとともに歩む』。その信念がぶれなかったからこそ、思いが伝わるグッズになったのだろう。

 楽天生命パーク宮城でも7月14日・西武戦から、ファンが球場で野球にふれあう日が帰ってくる。それでも、大観衆でスタンドが埋まる日は、まだ先だ。

 「(今後も)安心安全に観戦ができるためのグッズが必要だという議論をしています。声を出さずとも思いを届けられるアイテムを検討していきたいですね」。新たな応援の形を提供していくために。ファンへ寄り添うグッズ製作は、今この瞬間も続けられている。

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