ソフトバンク・周東佑京手記 遠かった五輪「見るもの」から「選ばれたい」へ
「プレミア12・決勝、日本5-3韓国」(17日、東京ドーム)
決勝に臨んだ日本が2日連続の“日韓戦”を逆転で制し、初優勝を飾った。2009年の第2回WBC以来、10年ぶりに世界一の称号を手にした。
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世界一と言われてもピンと来ないのが本音。今回はすべてがうまくいきすぎた。正直、何で自分がここにいるんだろうと思っていた。でも、足の速い選手はたくさんいる中で、稲葉監督がリスクを背負って選んでいただいた。僕が失敗したら稲葉監督の顔が立たない。結果を出さないといけないと思っていた。
去年まで、プレミア12とか東京五輪がいつあるのかもはっきり分かっていなかった。デスパイネに「五輪、見に行きたいよ」と言っていたぐらい。五輪は完全に「見るもの」だと思っていた。五輪の競技では特に陸上、水泳が好き。最近は夜中に動画サイトで陸上の100メートル走を繰り返し見ている。「世界記録」とかで検索をかけて「ボルトの衝撃レース」を見たり。ケンブリッジ(飛鳥)の走り方はきれいだなと思う。
海外の選手はバネが違うし、陸上の走りを自分がしたら遅くなると思う。だけど、足が速くなるためには大胸筋が必要だと千賀さんに言われた。そういう目線で見ると、胸が強くないと体幹を固定できないというのがよく分かる。僕ももっと走りに強さがほしい。
育成でプロ入りして、1年目に2軍で盗塁王になってスピードは通用すると思えた。でも、秋にU23W杯に呼ばれたときは「育成なのに」と戸惑った。その時、稲葉監督から「1番で使うから」と言われたけど、打てなさすぎて最後は9番。それから会うたびに「打ってるか」と聞かれるようになった。
理想は自分で出塁して、走って、かえってくること。初めて侍ジャパンに入って、また選ばれたい思いも出てきた。次は誰もが納得する成績を残して選ばれたい。今大会は打席に一度も立っていない。それが現実。急に変わるのは簡単でないと分かっている。でも自分の中ではもう、五輪はただ「見るもの」ではなくなっている。(日本代表外野手)