「選抜高校野球・１回戦、明秀学園日立４－３瀬戸内」（２３日、甲子園球場）

　明秀学園日立（茨城）が土壇場の九回に逆転し、初戦を突破した。プロ注目のエース・細川拓哉投手（３年）は８安打を浴び、６四死球と苦しみながらも粘り強くしのいだ。

　序盤、制球に苦しむ細川に、女房役の高田光基捕手（３年）は何度も声をかけた。「楽しむしかないぞ。思い切って腕を振ろう」。

　昨年秋からバッテリーを組む２人。高田から見た細川は「真面目で、目標を見つけたら一直線。不器用だけどコツコツ努力して、一度つかんだら自分のものにするタイプ」だという。「ランニングでもずっと一番前を走って『いくぞ！いくぞ！』と声をかけてくれる。頼もしいし、拓哉が一生懸命だからみんな苦しい練習も乗り越えられた」と、絶大な信頼を置く。

　大舞台のマウンドに、細川は「想像以上に緊張した」と振り返った。しかし高田は「いつも尻上がりに調子を上げるタイプ。腕が振れてくれば、球威もキレも上がる」と、どっしり構えた。今度は自分が細川を助ける番だ。マウンドに向かって、声をかけ続けた。

　高田の見立て通り、細川は五回以降、安定感を取り戻し、内野安打３本だけ。見事に立て直し、九回の逆転劇につなげた。高田は「粘り強く勝てたのは大きい。初戦を取ったら勢いがつく」と、苦しんで手にした甲子園１勝に大きな価値を見いだしていた。