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中京学院大 驚がくチームマネジメント

大学日本一となり、マウンドに駆け寄る吉川(右から2人目)ら中京学院大ナイン=12日、神宮球場(撮影・出月俊成)
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 大学選手権で史上7校目の初出場初優勝を成し遂げた中京学院大。ドラフト1位候補の吉川らを中心に、エース・柳川、捕手で主将の山崎らが繰り広げた快進撃は目を見張るものがあった。全国的には無名で、岐阜県中津川市の大学がなぜ頂点に立てたのか-。そこには現代の流れに沿ったチームマネジメントがあった。

 「私は積極的にアルバイトをしなさいと言うんです」と明かしたのは近藤正監督(68)。部員のほとんどは現在、アルバイトで生活費と用具代を稼いでいる。エース・柳川は焼き肉店のホール店員とスーパーの総菜売り場で週5日、練習前後に働いている。選手権でMVPと首位打者の2冠を獲った主将・山崎は、時給980円の牛丼店で午後7時から深夜まで働く。

 授業もあるため、日々の練習は2~3時間。「練習後に働くのは本当に苦しいです…」と優勝会見で苦笑いを浮かべながら語った山崎。ただチームは条件をつけており、深夜勤務があるコンビニなどは禁止。そして必ず“賄い付き”の店を選ぶよう推奨している。

 「体作りをする上で賄い付きは非常にありがたいですね。どうしてもコンビニの深夜勤務しかない場合は、授業には出なさいと。そして練習は出なくても出席扱いにしてあげる。眠いのに練習してもうまくはならない」と近藤監督。ただ世間一般的に強豪大学の野球部はアルバイトが禁止されている。その中で積極的に推奨するのはなぜか?それは90年代のバブル崩壊後から増えた一般家計の苦しさに起因する。

 例えば私立大学で野球をやろうと思えば、30万程度の入学金、年間100万を超す授業料に加え、寮費、部費、遠征費、用具代とかなりの費用がかさむ。特待生となれば話は別だが、金銭的な部分で大学では野球を続けられないと判断する選手は多い。

 「野球が好きな子には、何とか大学で野球を続けさせてあげたい」。岐阜中京時代に春夏5度、甲子園へ導いた近藤監督はそう語った。各高校へスカウトに出向く際も「4番やエースで無くても結構です。野球が好きで、大学で4年間、チャレンジしたいと思っている選手を優先的にください」とお願いする。

 「最近は母子家庭の子も増えてきました。これも時代なんでしょうね」と近藤監督。少しでも仕送りをする親を楽にさせ、野球を続けさせるためにアルバイトを推奨する。金銭的な理由で生徒の未来、情熱にフタをするわけにはいかなかった。

 さらに「野球が好きで入って、野球が好きなまま卒業してほしい」と練習では押しつけ的な指導はしない。少しでも上手くなるために選手同士が意見を言い、教え合う光景が中京学院大のグラウンドにはある。そんな純粋な思いが、神宮に入って爆発した。

 ナインが「1回勝てればいいと思っていた」と口をそろえる中で見せた快進撃。「山崎なんかはね、野球が楽しくてしょうがないって言うんですよ。ずっとプレーしたいって」と大会中、指揮官が明かしたように、全国の大舞台は苦労を重ねた選手たちにスポットライトを当てた。

 並み居る強豪を次々と撃破して成し遂げた史上7校目の初出場初優勝。「やればできるんだ」-。選手たちはそう言って喜びあった。若さと情熱を最大限に引き出したチームマネジメント。中京学院大が描いた軌跡は、あきらめないことの大切さ。そしてスポーツの世界に、不可能の文字はないことを教えてくれた。(デイリースポーツ・重松健三)

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