仙さん涙!宿敵G倒で初の日本一
「日本シリーズ・第7戦、楽天3‐0巨人」(3日、K宮城)
第7戦までもつれ込んだ頂上決戦は、楽天が巨人を下し、球団創設9年目で初の日本一に輝いた。楽天の星野仙一監督(66)は、監督として中日、阪神時代を含め4度目の出場で初制覇。シリーズ最年長優勝監督となった。九回にはエースの田中将大投手(25)が3番手として登板し、胴上げ投手となった。楽天はアジア・シリーズ(11月15日開幕・台湾)に出場する。
苦しんでいる人たちに、少しの勇気は与えられただろうか。自分のやってきたことが間違っていなかったと、思ってもらえただろうか。星野監督が、自身初の日本一。監督史上最年長での日本一を実現させ、Kスタの中心で9度、宙に舞った。
「就任当時、大震災で苦労なさっている方々を、日本一になって、癒やしてあげたい。それしかないと思ってやってきました。まだ、苦しんでいる人もいる。雀(すずめ)の涙でも癒やしてあげたいと、いつも考えてました」
阪神、中日時代でもなし得なかった日本一。4度目の日本シリーズで、それを果たした。「私のことなんかどうだっていいんだ。9年目で日本一になった。選手のおかげです」。最後まで、主役の選手たちを立てた。
自分は、舞台を作る演出家。そう、考えている。年を重ねても、それは変わらない。31日の巨人戦、死球を食らった藤田を、次戦となる2日もスタメンで起用した。負傷後は車いすで球場を後にした男の「出たい」という意欲を買った。この日の田中もそうだ。
彼らを使って負けることになっても構わない。「7戦目まで連れてきてくれた選手に感謝。舞台は整いました。私は舞台の袖で見ています」。緻密な野球ではないかもしれない。でも心を揺さぶられる起用、ファンを熱くさせる人情野球で、頂点に立てるということをこの日、証明した。
震災の被災者に「勝つことで勇気を」と訴えてきた闘将。Bクラスの2年間は、それが実現できなかった。大震災直後は遠征先から仙台へ帰ることを望む選手との溝も生じたが、「野球で勝つしかない」と断じた。
今でも「あの時の考えは、オレは間違ってないと思うんだ」と語る。その気持ちを貫いた今、熱い東北のファンが集った。描いていた光景が、目の前に広がっていた。
連日、2万5000人以上の満員。だがまだまだやることはある。「まだ、短期決戦で、辛うじて王者巨人を1勝の差でやっつけたけど、巨人より力は落ちます」。もっと勝って、強くなって、まだまだ勇気を与えたい。66歳、星野仙一の夢は、2014年に続いていく。