名古屋で「金本続投」を報じる
【9月29日】
友人が東京からナゴヤドームへ観戦にきていた。朝いきなり連絡があって「今から行くよ」というものだから、「あした台風だし、新幹線止まるよ」と、いいオトナにお節介を焼いてみたり…。
藤澤真木(ふじさわ・まき)。何度か書いたので覚えてらっしゃる読者もいるかもしれない。映画音楽界の巨匠・久石譲のご子息であり、右腕(みぎうで)。ひょんなことでウマが合い、阪神のゲームが東京であるときは麻布あたりでテーブルを囲む。一緒に酒を飲んでこれほど愉しい男は希少だ。
コンサートなど音楽活動で世界を駆ける藤澤だけど、いつ、どこにいてもインターネットでタイガースの戦いをチェック…そう、熱烈な虎党でもある。この日は藤浪晋太郎の完封勝利を見届け、ご満悦で東京へ帰っていったが、気になっていることがあったようで。
「金本さんは来季もやるの?」
直球を投げられると、ハッとする。そうか。順位も順位だから、やっぱりファンはやきもきする。隠し立てする理由もないので、こちらもフツーに答えておいた。
「もちろん、やるよ」
臆測で返事したわけではない。
金本知憲は就任2年目を終えた昨秋、新たに3年契約を結んだ。但し、球団史がもの語る通り、監督の契約期限などあってないようなもの。会社から「辞めてくれ」といわれれば、はい、それまで。当然ながら、金本が自ら「俺、来年もやるぞ」なんて言わない。
この業界、僕のようなオッサンは定時に球場にいることがシゴトではないと認識している。居場所は風のごとし。この秋の取材の限り、はっきりしたことがある。
金本は続投する。正確には、阪神が金本に4年目の指揮を託す。
大げさに書き立てることでもない。3年前、阪神は会社をあげて金本に「超」のつく「変革」を託したわけだ。「チームを一度壊してでも」と改革を期したオーナー坂井信也が「できるだけ長く一緒にやってもらいたい」と頭を下げた。虎党もそれを願ったと記憶する。大改革があっさり2年や3年で成就したら、25年も待ったカープファンに怒られてしまう。
ここナゴヤでこれを書く意味があると思っている。昨冬、生前の星野仙一が語っていたことをファンは忘れないでいただきたい。
「2年。あと2年待って…」
根っこから変えるのは簡単なもんじゃないんだ。まだ、時間はかかる。辛抱したってくれ-。
これがタイガースファンへ向けた星野の遺言、お願いである。
「死んでしまった人たちは死んでしまったわけだけど、その思いはずっと残る。そして僕たちはそれを受け継いで生きていくんだ」
名古屋のホテルで見た『半分、青い。』最終話で佐藤健演じる萩尾律の台詞に鼻がツンとなった。
大阪への帰り路、のぞみの車窓に雨の岐阜…星野源が歌う主題歌『アイデア』が頭から離れない。
雨の音で~歌を歌おう
藤浪、そして大山悠輔…阪神の未来を歌いたくなった台風前夜である。=敬称略=