矢野野球の真骨頂 阪神が今季“最も強さを感じさせた”交流戦ラストゲーム
デイリースポーツの記者が今年を振り返る企画「番記者ワイドEYE」。今回は交流戦を6連勝で締めた6月13日・楽天戦(楽天生命パーク宮城)。この日、阪神が挙げた6得点は、すべて『2死走者なし』からのものだった。阪神担当の和田剛記者(48)が今季“最も強さを感じさせた試合”として振り返る。
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「ヨッシャー!!」-いつもは冷静な近本が雄叫びを上げながら目の前を駆けていく。楽天生命パーク宮城のビジターチーム担当記者席は三塁側ベンチのすぐ左後方に位置する。近本が「思わず気持ちが出ちゃいました」と明かした叫び声が聞こえたのはもちろんのこと、沸きに沸く阪神ベンチのムードもじかに伝わってきた。
交流戦ラストゲームとなった6月13日・楽天戦。1点リードの八回に追いつかれ、5-5の同点で迎えた九回表の攻撃だ。マウンドには楽天の守護神・松井。木浪、糸井が連続で空振り三振に倒れ、簡単に2死となった。
続く梅野も2球で追い込まれたが、10球粘った末に四球で出塁。近本の2球目にディレードスチールを決めると、捕手の悪送球を誘い、三塁まで進んだ。そして、近本が一塁線を破る勝ち越しの適時三塁打を放ち、交流戦6連勝フィニッシュを決めたのだった。
実はこの試合、阪神の6得点はすべて『2死走者なし』からのものだった。特に五、七、九回の得点は2死から梅野が四球を選んで得点に結びついたもの。矢野監督は「2アウトから走者が出て得点につながっている。あきらめない野球ができたし、これをタイガースの強みにしていきたい」と胸を張った。
では、このような『2死走者なし』から走者が出ての得点は、今季の阪神でどれだけあったのか。得点した全イニングを調べてみた。カウントしたのは2死走者なしから走者が出て、適時打や本塁打につながったケース。つまり2死走者なしからのソロ本塁打はカウントしていない。
結果は20回しかなく、1試合に複数回あったのは、今回取り上げた楽天戦だけ。しかも1試合で4回も『2死走者なし』から得点しているのだ。この3連戦は涌井、田中将、早川と、パの首位を走っていた楽天の先発3本柱を撃破して3連勝。阪神は貯金を20に乗せた。まさにどんな状況下でもあきらめない矢野野球の真骨頂。そういう意味では今季“最も強さを感じさせる”一戦だった。
ちなみに、このパターンでの得点があった17試合の勝敗は13勝2敗2分け。矢野監督が「相手に与えるダメージも大きい」と話したように勝率は高い。そして後半戦になるにつれ、このパターンでの得点は減っていった…。来季は一年を通して“あきらめない野球”を実践できるか否かが、17年ぶりV達成のカギとなる。
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