阪神・藤浪がマー君になるための条件

 阪神のドラフト1位ルーキー・藤浪晋太郎投手(19)が、5日の巨人24回戦(甲子園)で今季ラスト登板、5回3失点で勝ち負けつかず、結局、10勝6敗、防御率2・75の成績でプロ1年目のシーズンを終えた。

 高卒ルーキーの1年目としては、江夏豊以来、46年ぶりに二桁の10勝をマークするなど、球団史にその名を刻む活躍をみせた。巨人戦終了後、藤浪は「今季は勝たせてもらった。来季は胸を張って『10勝しました』と言えるようにしたいです」と謙虚に話したが、5月に一度登録抹消された以外、ほぼ1年間先発ローテーションを守って首脳陣の信頼を勝ち取ったのは、藤浪自身の力に他ならない。

 周囲の大半が「予想以上の活躍だった」と高い評価をする一方で「まだまだ勝てたはず」と厳しい声も存在する。

 阪神、ロッテなどで通算320勝を挙げたOBで、今季の阪神の試合をつぶさに見てきた“虎のご意見番”小山正明氏もその一人。8月30日に10勝目を挙げて以降、5試合に先発しながら、1勝の上積みもできなかったことに、小山氏は無念さを隠さない。

 「一番しんどい夏場をうまく切り抜けて10勝できたのに、涼しくなった9月以降に勝てなくなったのはなぜか。チーム状態も決してよくなかったけど、藤浪自身にも問題があったと思う」

 小山氏が指摘するのは、藤浪の投球フォーム。この頃から、走者がいなくてもセットポジションから投げるスタイルに変えていた。ここに至るまでもその試合ごとにフォームを微妙に修正し続けて結果を残してきたのだが、それでもなお満足できず、安定性を求めてセットでの投球を選んだ。だが氏は「ここに問題がある」と断言する。

 「これまで名を残してきた大投手で、試合開始から走者のいない場面でもセットで投げた人がいたか?絶対にいない!!何であの長身を生かす、ワインドアップで投げないのか。体を大きく使えば腕だって大きく振れる。確かに安定性に欠くかもしれないが、セットにして抜群に安定しているかと言えば違うでしょ?絶対ワインドアップに戻すべきですよ」

 安定性を求めるあまりに本来の威力ある速球は影を潜め、打者も恐怖心を持たなくなった。

 もちろん、これがすべてではないにせよ、因果関係があるのは間違いない。小山氏の怒りは藤浪本人というより、投手コーチら首脳陣へ向いている。「もっと大きく育ててやってほしい。彼の持っているポテンシャルからみれば、10勝で終わるレベルじゃない」と、その“器”に合わせた育成をすべしと提言した。

 今季日本新の23連勝を飾った楽天・田中のように、藤浪も負けない投手、ここ一番で勝てる投手への期待がかけれらる。その意味で、2年目に向けた今オフの調整が大事になってくる。

 「とにかく基礎体力の強化に尽きる。まだまだ自分の感覚通りに体を使いこなせていない。下半身をより強固にして“原点”であるアウトローにきっちり投げられるよう球数をこなすことやね。ここが藤浪の運命の分かれ道と思う」

 ポストシーズン終了から来年のキャンプインまでをいかに有効に過ごすか。藤浪が“田中級”の大エースになれるかどうかは、このわずかな時間にかかっている。

(デイリースポーツ・中村正直)

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