「阪神2‐1巨人」(5日、甲子園)
シビれた〜。阪神1点リードの八回1死満塁、絶体絶命の大ピンチで筒井和也投手(30)が登板。球威抜群の直球で押しまくって、無失点で切り抜けた。投手陣が踏ん張り、新井にも意地の一発が飛び出し、チームの連敗は5でストップ。始球式に登場した芦田愛菜ちゃんが勝利の女神となって、1日で勝率5割復帰だ。
逃げ場はなかった。マウンドは息もできないほど重苦しい空気に満ちていた。1点リードの八回1死満塁、筒井に託された働き場所はまさに断崖絶壁。祈るようなファンの気持ち、絶対に勝つというチームの思い‐。それらすべてを背負った左腕が、こん身の力で巨人をねじ伏せた。
八回、セットアッパーの榎田が1死から寺内を四球で歩かせ、坂本、村田に連打を浴びた。一打出れば逆転の場面で筒井にスイッチ。ブルペンを出る前、守護神の藤川に「打者に向かっていくだけやぞ」とゲキを飛ばされ闘争心に火がついた。
直球に強い高橋由に対して、オール直球勝負で遊飛にねじ伏せた。「これでいけると思った」。息つく間もなく、谷には初球にチェンジアップを投じただけで、以降はすべて真っすぐ。追い込んでからの5球目、ど真ん中に投じた143キロ直球で谷を右飛に仕留めた。
「もうシビれました」と顔を紅潮させながらマウンドを降りる左腕に、惜しみない大歓声が降り注いだ。これで12戦連続無失点の左腕に、藪投手コーチは「筒井がみんなを救った。真っすぐでいけるのは、自信を持って投げている証拠」と手放しで絶賛する。
自信‐。その言葉は筒井に最も必要だったかもしれない。2年前、安芸春季キャンプでのブルペン。捕手の城島から、いきなり「同点の九回2死満塁!」と状況を設定された。打者もいない。観客もいない。それでも、ストライクを投げることができなかった。
最後は押し出し四球となり「はい、試合終了」と女房役の声が響き渡った。「あんないいボールを持ってるのにもったいない」。城島だけでなく、他の投手陣もこう口をそろえた。筒井は当時を「ボールが先行したら不安だった」と言う。
ただ今は違う。「自分を信じて投げること。ボールでも無駄なボールはない」と精神面の成長を口にする。「口酸っぱく言ってきた」城島も、この日の快投劇に「自信を持って打者に投げてるよね」と目を細めた。
筒井がいなければ連敗は止まらなかった。5割復帰の殊勲者に和田監督は「考えないといけない」とセットアッパーへの昇格を示唆した。恐れるものはない。脱皮した左腕に、もう、不安の2文字はない。
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