柴犬の飼育放棄が増えている…その“身勝手”な理由とは

 「最近、柴犬をよく見かける」-。そう感じたことはありませんか?ペット保険のアニコム損害保険株式会社が毎年発表する「人気犬種ランキング」によれば、順位に大きな変動はないものの、全体に占める柴犬の割合は増えています。「ザ・日本犬」という風貌が好まれるのか、欧米でも愛好家が多い犬種です。しかし、その一方で、柴犬の飼育放棄は多いそう。大阪を拠点に柴犬の保護・譲渡活動を行っている「Dog Shelter Osaka」の奥谷友紀さんに、現代の柴犬事情についてうかがいました。

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 奥谷さん「テレビCMで起用されることも多いからでしょうか、“柴犬ってかわいい!”というイメージだけで飼う方も少なくないんです。実際、仔犬のときはコロコロとしていてかわいいですしね。でも、柴犬の気質として、自分を持っていてこだわりが強い傾向があります。“イヤなことはイヤ”と自己主張をするので、飼い主さんの側からすると“しつけがうまくできない”となる。引っ越しで飼えなくなった、子供にアレルギーが見つかったなど、ほかの犬種と同様の理由による飼育放棄もありますが“思っていたのと違った”という理由が柴犬には比較的、多いかもしれません」

 なんという身勝手な理由でしょうか。改良されていない分、“犬らしい”気質が色濃く残っているかもしれませんが、しっかりとコミュニケーションを取り、トレーニングをすれば、大半の柴犬はちゃんと飼い主の言うことを聞いてくれます。トイレの場所だって覚えるし、オスワリやマテもできるのに…。

 奥谷さん「気質を理解しないまま飼ってしまうと、ちょっとうまくいかなかっただけで感情的になったり、力で抑え込もうとしたり。それでは犬との関係は築けません。犬のほうは我慢の限界を迎えて、噛んでしまうこともあるでしょう。でも、それを“柴犬は飼いづらい”と犬のせいにするのは違いますよね」

 柴犬を飼い切れない理由の一つに“こんなに毛が抜けると思わなかった”というのもあるそうです。柴犬はダブルコートと呼ばれる被毛構造。皮膚を守るオーバーコートと体温調節するアンダーコートがあり、換毛期にはアンダーコートがごっそり抜けます。それ以外の季節も抜け毛は多いと言えるでしょう。でもそれは、柴犬という犬種の特徴であって欠点ではありません。犬を飼う前にほんの少し知識を持っていれば、不幸な犬を増やさずにすむのです。

 奥谷さん「柴犬人気の高いアメリカにも柴犬専門のドッグレスキュー団体がいくつかありますが、飼育放棄の理由は日本とあまり変わらないようです。柴犬に限らず、動物を迎える際は、家族構成や生活スタイルに合うのはどの動物か、犬ならばどの犬種か、しっかり考えてほしい。“かわいかったから”という衝動買いは厳禁です。ご高齢の方が柴犬を好まれる傾向もあるようですが、柴犬はある程度の運動量が必要ですし、老犬になると認知症になる可能性もある。自分の今の年齢から飼い始めて、将来、介護が必要になったとき、きちんと世話ができるのか、自分の身に何かあった場合の受け入れ先など、いろいろな可能性を十分に考えた上で家族として迎えていただきたいですね。忠誠心は強いけれど、飼い主以外になつかないわけではありませんし、フレンドリーな柴犬もたくさんいます。ヒトがきちんと導いていい関係を築ければ、きっと最高の家族になってくれますよ」

 柴犬の飼育放棄が多いのは、決して柴犬の責任ではありません。ペットを飼うということ、もう一度、考えてみませんか。(神戸新聞特約記者・岡部充代)

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