なぜ「きつねうどん」という名前に?大阪人のソウルフード発祥の店に聞く

伝統のきつねうどん。シンプルながら店主の“こだわり”がつまった絶品だ
「うさみ亭マツバヤ」3代目主人の宇佐美芳宏さん(左)
夏にうれしい「冷やしきつね」。一段と甘い“あげ”が疲れを忘れさせてくれる
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 うどん発祥の地は福岡という説があり“うどんの日”は7月2日だという。しかし、大阪人はそんなことに関心がなく!?むしろ、気になるのは「きつねうどん」のこと。大阪・南船場に発祥の店があると聞き、明治26年創業の老舗ののれんをくぐってみた。

 数あるうどんメニューのなかでも大阪人のソウルフードといっていい「きつねうどん」。そのルーツは、やはり大阪にあり、120年以上も南船場で営業してきた。店は「うさみ亭マツバヤ」。心斎橋筋から東へ1本目の丼池ストリート沿いにある。引き戸を開けて店内に入ると懐かしい昭和の香りがした。

 主人の宇佐美芳宏さん(73)は3代目。「きつねうどん」のいわれを聞くと、初代・要太郎さんが、修業していたすし店「たこ竹」から独立するにあたって、業種が重ならないようにうどん店「松葉家」をオープンしたのがそもそもの始まりだという。これが明治26年のことだった。

 「かけうどんに“添えもん”として、甘いおあげさんを出したそうです。すし職人ですから当然おいなりさんも作っていました」

 当初はおいなりさんからきつねを連想し、それをもじって「こんこんうどん」と呼んでいたという。ところが、せっかちな客があげをうどんに入れて食べるようになり、店側もこれに合わせて最初からうどんにあげを乗せるように。それと同時に「きつねうどん」として定着した。

 店は船場の問屋街にあるが、周囲はマンションやホテル、駐車場に変わった。「昔はすごい人通りで、1日200杯ほど出てました」。風景は変わったが味は変わらない。「きつねうどん」の値段も1杯580円と踏ん張っている。

 気になるあげは京都の錦市場、うどんは小麦の名産地と知られる筑後いずみから取り寄せている。味の決め手となるだしのベースは利尻昆布とかつお節は本節、ソウダ節、サバを使用。しょうゆは松江と竜野からと、とことんこだわっている。

 早速、きつねうどんをツルツルッといただき、勢い余って冷やしきつね(650円)も注文。見た目は濃い感じだが、どちらもいいだしが出ている。特に冷やしのきつねのあげは一段と甘く、たまっていた疲れを一瞬、忘れさせてくれた。

 おじやうどん(780円)も看板メニューのひとつだ。南部鉄器にご飯とうどん、それにかしわ、穴子、シイタケ、かまぼこ、きざみあげ、ネギ、しょうがなどを入れ、煮込んだもの。シラサエビとサワラの入った鍋焼き風の大阪うどん(1000円)も好評だ。

 「(明治)維新から150年ですから結構長いこと続いてます」と宇佐美さん。きつねうどんの聖地へは大阪メトロ・心斎橋駅から徒歩10分弱。大阪人もそうでない人も120年超えの伝統の味を試してみてはいかが。(デイリースポーツ特約記者・山本智行)

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